■ 06話/眠そうな剣士。
「すいません、逆に開けてもらっちゃって…」
ああ、別にいい。と着物を着崩した長髪の男の方は、私が何とか開けようと試みたが開かれる事がなかった襖を中から開けてくれ、よろっと顔を出した。
もう体調は良いのかと聞いてくる事からして、この人が助けてくれたのだろう。
「助けて頂いたのですよね、ありが…」
「いや、俺が拾って来ただけだ、気にすんな。ああ、疲れた。」
言葉を遮られ、この城の中では珍しいであろう狭い部屋に腰を落ちつかせる。
私も近くに座ると驚いた顔をし、此方を見る。変な事をしただろうか、私は。
「お前、まぁ良い。この刀に興味があるわけ時なさそうだしな。」
この刀?と、首を傾け目をやるとそれはそれは剣士の目に狂いがなければ、異様な氣を放つ刀。手を伸ばしたら終わりの様な気がして唾を飲む。
「この刀、もしかして…」
まぁ、女でも剣士と言った所かと呟きこれは四季崎季記の作った刀で斬刀「鈍」(ザントウ・ナマクラ)と紹介した。
いくら私でも四季崎といえば聞いた事がある、そうですかと返事をし再度、柄や鍔、鞘が真っ黒な刀を見る。
あらゆる物を抵抗なく一刀両断できる。宇練家に代々受け継がれており俺が現所有者、宇練銀閣だと。
やっと、聞けました。と微笑むとまたも顔をしかめる彼に笑いが込み上げる。
「貴方の名前ですよ。」
「俺の名前…お前、聞いても尚この刀が欲しくならないのか?」
おかしな事を言います。コレは貴方のものじゃないですか。
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顔を隠し笑うその姿はとても楽しそうで、笑われているのだと分かっていても私も嬉しくて。
こんな所に1人で住んでいる自分は、こんなに話したり笑ったのは久しぶりだと言ったから。
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