▼ 暴君あらわる。
わたしはね、この歳にもなってふらふらしているフリーターの不良娘なんだってさ。昨日、実家に久しぶりに帰ったらお父さんがビール片手にそう笑ってた。
不良娘ってなんだよ、別に髪の毛が金髪でも高いヒールを履いて厚い化粧をしてるわけでもない。
本当、平凡な25歳なのに。
別にふらふらしてるってやりたい仕事が見つからないだけでちゃんと仕事だって週5くらいに入ってるし、海外旅行やら結婚予定もないけどいつかの為にそれなりに貯金だってしてる。
まぁ、その代わりにアルバイトタイムだから短時間なのが少しあれなのだが。
シャカシャカと懐メロを聴きながらわたしの暮らすアパートの帰路を歩く。
一人暮らしだって出来るくらいには働いてる。保険だって扶養から外れているし、生活費を借りたことだってない。これで不良娘って言うのはおかしいだろう。ふん、根に持つタイプで悪かったな。
階段を登り、ポケットから鍵を取り出す。
木目掛かった扉を開ければ、ほらここがわたしのお城だ。
「ただいま」
扉を閉めて靴を脱ぎ早くソファーに座りたいと数歩歩いたところでヒンヤリした物が首筋に当てられた。
なんぞこれ。
少ししせんを動かして元を辿れば、深緑色の袖が見えた。
やっべこれって泥棒って奴ですか?なんでまたこんなアパートに…外にブラジャー干してたからかな、先輩に気をつけろって言われてたのにそれを無視してめんどくさいと干して出たのがいけなかったんだ。あれ、でも戸締まりはしっかりした記憶がある。目の前のベランダに繋がるガラス戸は割られてもないし鍵も掛かってる。
「お前は誰で、ここは何処だ。」
それは此方のセリフです。
2014.11.07
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