■ 白雪姫舞台裏


カメラワーク 七花

「こんにちはー、鑢七花です。えー、俺…っぃて!僕が厳選したNG映像をご覧下さい。…ったく殴る事ないだろ」




〜NG集〜


【その一】


白雪姫はその頃森で動物たちと遊んでいました。しかし後ろに忍び寄る魔女の手下の剣。
白雪姫は恐怖のあまり叫びます。

「きゃああああ!!」

その恐怖に染まる姫の顔を見た手下は、こんな美しい人を殺すだなんて出来ない。そう思い大粒の涙を落しました。

「不出。すまないが涙が出ない、むしろ私から逃げる白雪姫の顔にムラムラするのだが」

どうしたらいい?とカメラを持つ七花に仮面を被って口しか見えはしないが多分、真顔で顔を向ける右衛門左衛門。

はい、カットー。

「ちょっとおー、右衛門左衛門何してるのよぉ、私疲れちゃったわあ」

「すみません、姫様」

「ちぇりおー!!ここは一番感動するシーンなのだぞ!!目薬でもそこらへんにあるゴミでも目の中に入れて泣かんかぁぁぁあ!」


んな、無茶な… by.七花




【その二】


その頃、小屋から離れた炭鉱で7人の小人が仕事をしていました。その中でリーダー格の小人は時計を見ると、もう帰る時間だと言います。

「おい、そろそろ帰ろう。こんな時間だ」

「早く帰らないと暗くなってしまいますね、蟷螂さん」

「腹が減ったな、蜜蜂。…えーっと、なんだっけ?」

きょろきょろと蜜蜂と蟷螂を見やる蝶蝶。
はい、カットー。

「蝶蝶さん何回目っすかマジで、先に進まないっすよ。きゃはきゃは」

「台詞あそこだけなのになー、蝶蝶さん要領わる過ぎー」

「あの、あのっ、皆さんその辺に。蝶蝶さんが拗ねるともっと先に進みませんからっ」

「良いですね、良いですね、そのまま話が終わる白雪姫って言うのも新しいんじゃないですか?くくく…」

蜜蜂がプルプルと震える蝶蝶に蝶蝶さん…と手を伸ばすがそれは蝶蝶の大きな声によって止められた。

「て、てめぇら、それでも仲間かよっ!ばっかやろー!!」

そしてその15分後、七花は撮らえる。
収録現場隅で膝を抱える蝶蝶の姿を、近くに寄ればぶつぶつと聞こえる鼻水を啜る声。

「ぐずっ…ちくしょ…腹が減ったな、蜜蜂。今日の夕飯はなんだなんだ、腹が減ったな、蜜蜂。今日の夕飯はなんだなんだ」


繰り返される台詞に笑いを堪える。

帰ってまにわに達に見せよ… ププ by.七花






【その三】



あれからしばらくたち小人と白雪姫はとても平和な生活を送っていました。
小人たちが仕事に行くときに7人みんなのおでこにキスをし送ります。
ある者は顔を赤く、ある者はふいと顔を背け、色んな表情が白雪姫を癒していきました。


こ「はい、カットー、カットカット!」

ぞろぞろ皆が集まる。

「何だ貴様等は、今のナレーションは噛んでもいないし、別に悪い所は無かったぞ」

そうとがめが言えば騒ぎ出す小人役のまにわに。

か「何故、今の所がナレーションなんだ?納得できんな、ナレーションである意味が分からない。小人達と愛を育んでいき幸せな生活をおくる中で魔女が登場しそれを壊す。その物語の背景を忠実に再現し映像に残すべき所では無いのか」

シーンと辺りが静まり返る。

ち「蟷螂殿、そんなに白雪姫にキスされたかったのか?」

こ「きゃはきゃは、じゃあ俺もされたいっすー!」
か「なら俺もして欲しいぜ、白雪姫ちゃーん!」

く「一体皆さんはどこにキスして貰いたいんでしょうかねぇ、良いですね、良いですね、皆さん欲望に塗れていて良いですねえ」


み「ち、ちょっと!皆さん破廉恥ですよ!白雪姫、僕の後ろに避難して下さい。」

そう言った蜜蜂は自分の後ろに白雪姫を隠し、それに他のまにわにが騒ぎ出した。



それをシラーっとカメラに映す。


……何がしたいんだ?皆 by 七花



【その四】


「そんなに泣いてどうしたのでござるか」

小人達は口々にこう言いました。

「あ、あのその、白雪姫が魔女に毒リンゴを食べさせられて」

「死んじゃったんだぜ」

「………ぐ、通りすがりの王子には関係のない事、お帰り下さい」

「何言ってるんですか!蟷螂さんセリフが…いや、でも」

(ここの時点でふつーカットだよな…)

「しょうがねえなあ、王子っ白雪姫に口付けを!口付けをすれば目を覚ます筈だ」

(おお、ないすふぉろー!)

「何を根拠にって感じだけどな」

「良いですね、良いですね、さあ盛大にキッッスをーー!」

小人の話を聞きながら棺桶の中を覗きこむととても美しい姫に息をのみました。



「で、出来ぬっ…せせせ接吻など、しかもこんなに大勢に見られてするなど…白雪姫、拙者と一度あちらへ…」


がしゃーん!!

ガラスの割れる音がする。うわ。なんだなんだ?後ろを振り返れば鳳凰が魔法の鏡を叩き割っていた。

うん、やると思っていた。俺はやると思っていたよ。

ぺ「ほ、鳳凰様っ!」

「…我がこの役で黙っているとでも思っていたか…とりあえずそこの堕剣士の役をこの鏡の役と交換「却下」」

とがめ…なんて怖い物知らずなんだ、あんたは。

「却下だ。もうそのシーンはおさめておるしな、王子顏と言ったら錆しかおらぬだろう」

見ろ、この顔をと錆を指で刺すが王子顏ってなんだよ、王子顏って…

「ぐっ…」
「頭領殿にはまた良い役をまわすからしばらく耳栓して後ろを向いていてくれ」



「では錆、準備は良いか?」
「せ、接吻でござるな…」
「そうだ」
「……するフリではいかぬのか」
「リアリティに欠けるだろうが」
「いや、しかし……」
「んじゃあ、あそこの耳栓している奴にでも頼むか。やりたいと言っておったしな「やろう」」
「え?」
「やる、拙者が引き受けたでござる。は、早くカウントを…」

「じゃあ七花、カメラを頼むぞ。それでは皆のもの頼むぞ! 3、2………」




ちゅっ、

おおーした。ちゅーした。
まさか生のちゅーをここでみる事になるとは、というか錆の奴大丈夫か?

もう劇とかそっちのけって感じだけど、むしろ手を取って今にもプロポーズしそうだけど。



そして、白雪姫にキスをすると白雪姫は目を覚ましました。

「し、白雪姫、拙者といいい一緒に…」


(台詞どもってたけどそれはそれで錆ファンは萌えるってとがめが言ってたな)


そして姫は王子と一緒に白馬に乗りお城へ向かい幸せに幸せに暮らしましたとさ。

めでたしめでたし。



「カーット!よし後は編集するだけだな。皆、打ち上げへ行くぞー」

ざわざわ役者が帰り支度を初めている。そして優しい白雪姫は耳栓をし椅子に座り後ろを向いている鳳凰へと声を掛けた。

「鳳凰さん、終わりましたよ。皆でこの後、打ち上げです…わっ」

きゃーっ、きゃーっ。見てない。俺は見てない、子供は見てはいけない。いや、俺は二十四だが見てはいけない気がする。

「……消毒くらいさせろ」





あっ、やべ。
カメラ付けっぱなしだった…

かちゃり。



2013.08.08

(感想ぶちまける。)

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