■ 赤ずきんちゃん<パロ

 むかしむかし、あるところに、とても可愛らしい女の子がいました。
 ある時、その女の子のおばあさんが赤いビロードの布で、女の子のかぶるずきんを作ってくれました。
 そのずきんが女の子にとても似合っていたので、みんなは女の子の事を、『赤ずきん』と呼ぶ様になりました。

 ある日の事、お母さんは赤ずきんを呼んで言いました。

「赤ずきん殿、婆様がご病気になられたそうだ。婆様はお主をとっても可愛がってくださったのだから、お見舞いに行ってあげるでござる。喜んで下さるであろう」
「はい、母上」
「それでは、この団子と、上等な日本酒を一本持って行くでござる」

 赤ずきんがおばあさんの所へ一人で行くのは始めての事だったので、お母さんは心配でたまりません。
 でもお母さんには用事があって、一緒に行けないのです。

「いいか、途中で道草をしてはいかぬぞ!それから、オオカミに用心するのだ。オオカミはどんな悪事をするか分からぬ、話しかけられても知らん顔するのでござるぞ」

「はい、母上。大丈夫ですよ」

「いや、しかし途中まで拙者が…」
「母上。大丈夫ですよ、それに用事があるのでは?」

言葉を詰まらせたお母さんはどうしても?と言葉を濁したが大丈夫ですと言い張る赤ずきんに引き下がるしかありませんでした。

 赤ずきんは、お母さんを安心させるように元気良く、
「いってきます!」
と、言って、出かけて行きます。

  おばあさんの家は、ここから歩いて一刻ぐらいかかる森の中にありました。
 その日はとても天気のよい日で、赤ずきんがスキップしながら歩いていると、そこへオオカミが現れたのです。

「こんにちは。赤いずきんが可愛い、赤ずきんちゃん」

 オオカミはきゃはきゃは甲高い声で笑いながらながら、赤ずきんに話しかけました。
 赤ずきんはお母さんに言われた事を思い出しましたが、動物好きの赤ずきんには、ニコニコしているオオカミが悪い動物には見えません。

「こんにちは、オオカミさん」

 赤ずきんが返事をしてくれたので、オオカミはニヤリと笑うと尋ねました。

「赤ずきんちゃん、今からどこへ行くんだ? たった一人で」

「お婆様のお家です。お婆様がご病気だから、お見舞いに行くの」

「そうかい。そりゃあ偉いな、きゃはきゃは!・・・ん? そのバスケットの中には、何が入っているんだあ?」

「団子と日本酒です。お婆様のご病気が早く良くなる様に、持って来たのです」

「なるほど、それで何処にあんだぁ ババァ…いや、お婆様の家は」

「森のずっと奥の方よ。ここからなら、歩いて半刻くらいかかるわ」

「半刻か・・・」

 オオカミは、ちょっと考えました。
(ババァの家を探して、食べるには、もう少し時間がいるなぁ。よし・・・)

「赤ずきんちゃん。俺が通ってきたあの道の先にすげぇ花畑があったぜぇ。ゆっくり花を摘んで行くといいぜ、きゃはきゃは」

 赤ずきんは、オオカミの言う通りだと思いました。
 花を摘んで持って行けば、おばあさんはきっと喜んでくれるに違いありません。

「そうですね、オオカミさん、あなたの言う通りです。私、お花をつみながら行きます」

 赤ずきんはさっそく、色々な花を探し始めました。

 さて、赤ずきんと別れたオオカミは、そのまま真っ直ぐ、おばあさんの家へ行きました。
 トントンと、戸を叩くと、
「うん?どちら様かな?」
と、言う、おばあさんの声がしました。

 オオカミは、女の子の様な声を出しました。

「赤ずきんよ。団子と日本酒を持って来たの。開けてちょうだいな」

 それを聞いたおばあさんは、うれしそうな声で、
「おや、赤ずきんか。さぁ、カギはかかってないから、戸を押して入っておいで。我は少し風邪を拗らして居てな、床から起きられないのだ」

「そうかい。それじゃあ、遠慮なしに上がらせてもらうぜ!きゃはきゃは!」

 オオカミは戸を押し開けるとベットに伏せているおばあさんに飛びかかりました。






 その頃、赤ずきんはまだ花を取っていましたが、やがて手に持ちきれないほどたくさん取ってしまうと、やっとおばあさんの家へ行く事を思い出しました。

「そうだわ、急いで行きましょう」

 おばあさんの家に行ってみると入り口の戸が開いていたので、赤ずきんは不思議に思いました。

「どうしたんだろう? おばあさんは、いつも戸を閉めておくのに」

 赤ずきんが家の中へ入ると、部屋の奥のベッドには、おばあさんが寝ているようでした。

「こんにちは、お婆様」

 赤ずきんが大きな声で挨拶しましたが、何の返事もありません。
 赤ずきんは、ベッドに近づきました。

(あら、おばあさんの様子が変。病気でこんなになってしまったのかしら?)

 赤ずきんは思い切って、おばあさんに尋ねてみました。

「お婆様、お婆様の耳は、ずいぶんと大きいのですね」

 すると、おばあさんに化けたオオカミが言いました。

「そうとも、可愛いお前の言う事が、よく聞こえる様にね」

「………?目に赤い模様が描いてあって、何だかいつものお婆様のようだけれど」

「怖がる事はないよ。可愛いお主はよく見えている」

「それに、お婆様の手の大きいこと。お婆様の手は、こんなに大きかったかしら?」

「そうだよ。大きくなくては、お主を抱いてあげる事が出来ないからな」

「それから何と言っても、その大きなお口。お婆様のお口があんまり大きいので、びっくりしてしまいました」

「そうとも。この大きい口は、お主を…」

「………お主を?」



「可愛いお主を食べる為だよ、赤ずきん」

おばあさんはそう言うと、赤ずきんをの唇をパクリと食べてしまいました。



「止まれ!止めろ、カットだ!!」

ドタドタと錆白兵はカメラに割り込み、台本をばしばしと叩き訴えた。ぞろぞろと役者や監督が集まり始める。

「台本と違うでござる!監督殿も何故カメラを止めぬのだ!!」

錆白兵はおばあさん兼オオカミさんを見事に演じた鳳凰を指差しながら凄い剣幕で監督を見る。

カメラを回す七果は苦笑いでとがめを見るが胸を張って言い切るとがめに皆大きく転けた。

「何を言っておる、面白ければそれで良いと思わないか?なぁ、七果」

「いやぁ、ははは」

肩をぼきぼきと鳴らしながら猟師役の銀閣が口を開く。めんどくせぇなあと。

「俺の出番は無いなら帰っても良いか?ゆっくり寝てぇんだが」

「ああ!良い絵は撮れたからな、帰っていいぞ、すまんな遠征からわざわざ」

じゃあなと火縄銃をぽいと捨てあっさりと引き上げる背中を唖然と見つめる錆白兵はわなわなと震える。

「この配役はどうなっているのだ!何故拙者が母親をやらねばならん!」

とがめは心底面倒臭そうな表情を浮かべ錆に問うた。

「お主、次回の作品"白雪姫"で王子をやりたくはないか」

「やりたい」

その為の今回の配役だ、皆平等にせねば不公平であろう?と高らかに笑う。

「その話、誠ならば致し方ないが…そこの二人いちゃつくな!!」

「何だ嫉妬か?男の嫉妬ほど見にくいものはないな、なぁ赤ずきん」

頭巾も顔も真っ赤にする姿をくつくつと喉を鳴らし楽しそうに眺めているおばあさん役の鳳凰は赤ずきんの肩を抱いた。

「くっ…そんな物語では無かった筈、そうだ!オオカミ役は何処にいる!?真庭の…」

「ああ、蝙蝠ならあそこだ」

鳳凰が指差す先には、毛皮を剥がれ地面に顔をめり込ませた蝙蝠が身体をぴくぴくとさせていた。

「可愛い赤ずきんは我が食べて仕舞いたくてな、蝙蝠の役も我が頂いた」

さぁ、続きをと赤ずきんをベットに押し倒す鳳凰に刀を向ける。

「そそそんな事が、あって許されると思っておるのか貴様…退け」

「くくく、さて赤ずきん、一緒に逃げようか」


赤ずきんを軽く抱きかかえ薄刀、針から一目散に逃げ出す元気なおばあさんと赤ずきんでした!

ちゃんちゃん。


「なぁ、とがめさん?」

「何だ、七果」

「これはオンエアして良いのか?」

「まぁ、視聴者がどう言うかは分からんが撮っているこっちが楽しかったから良いのではないか?」



題材/童話/赤ずきん
2013.06.20
(感想ぶちまける。)

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