■ アイザックのひがみ。
※アイザックとパジャマからの番外編です。
とある日、私はアイザックに呼び出されたのでギルドを出ようとすれば大きな声でSTOPがかかった。何事だと振り返れば「ごめん、口がスベった」と舌ベロをだすナズナを後ろに連れてプリプリ怒っているソウジロウ君が立っていた。え、ナズナちゃん言ったの?めんどくさいから言うなっつったじゃん。
「あ、はは〜、ごめんなさい」
「別に僕は行くなだなんて言ってません!黙って行く事に怒ってるんです!!」
「訳すと「僕は嫉妬深いんです」だな」
後ろのナズナちゃんは翻訳機ですか?ナズナちゃんに顔を赤くしながら「言わないでよ〜!」っと焦っているソウジロウ君が可愛いくて笑ってしまった。私が一緒に行こっと手を出せば一気に顔を明るくして機嫌よく「はいっ!」と手を掴んだ。
ついでにナズナちゃんも一緒に着いてきて、待ち合わせ場所に行けばすっごく顔を歪ませたアイザックがいて私は苦笑いで返した。
「なんでお前等もいんだよ」
「すいません、彼氏なので。ちゃんと僕の許可をとってからにしてくれますか?」
「マネージャーかよ、お前はあいつの」
「何回言えば理解するんですか、彼氏ですよ」
「どうしよう、ナズナちゃん」
「良いじゃん、あたしは見てて楽しいけど」
なんだか、カフェに着いた。ここに一緒に来ようとしてたの?なんだか私とアイザックがお洒落なカフェでお茶を飲むのを想像したらちょっと笑える。まぁ、ファーストフード店やファミレス、居酒屋なんかは何回か言った事あるけどカフェなんて静かでお洒落な空気はうちらには絶対に似合わない。
「なに笑ってんだ、ブス」
「ブスとはなんだ、怪物」
喧嘩しながら席に着けばカチリと目が合う、ありえない。ありえない。なんだこの偶然はありえないだろ。
「やぁ、今日はミノリの提案で記録の地平線メンバーでお茶なんだけど珍しい組み合わせだね」
ぐわぁぁ、楽しそう。シロ君がすっごい笑顔で話掛けて来た、人の不幸が大好物って言葉が似合いすぎるぞ。
「あれだな、とりあえず泥沼祭りだな」
「泥沼ってなんすか?」
「あ!昼ドラの代名詞ですよねシロエさん!」
うん、正解っと微笑むシロ君に今とてつもなく昇竜拳を喰らわせたい。子供に何を教えてるんですか。助けて〜っと奥の班長を見つめてもニコッと微笑むだけで何もしてくれない。紅茶美味しいですにゃあなんて言ってる場合じゃないんですってば!!
「ルディ、あーん」
「ぱくっ…美味しい、美味しいぞミス五十鈴!」
……。
「ちょ、おい反対見てみろ花子。偶然にも程があるだろ」
アイザックが言った方を向けば眼鏡のレンズを光らせるクラスティ様と高山さんがいた。
「ひっ、これはマズい非常にまずい、どっか違う所に行こう。あ!用事思い出した」
「遠慮しなくて良い。それとも何か?私の隣が嫌とでも?」
「い、いえ、滅相もない」
そして両隣りにいつもの面子という、このカフェ自体が異様な空気に包まれた。顔の知れた面子という事もあってかそそくさとカフェを離れる一般市民。
「ちょ、アイザックこれはなんの冗談ですか、バカなの?バカザックなの?」
「知らねぇよ、今度呼んだら捻り潰すぞ」
いつものように喧嘩していればナズナちゃんが腹の横をちょいちょいと突つく。耳元でソウジと聞こえソウジロウ君を見たらアンパンマン顔負けにほっぺを膨らましていた。
「そ、ソウジロウ君…?」
「仲が良いんですね」
うわ、すっごい怒ってる。テーブルの上に置かれているグーになった手がふるふる震えているのを私は見てしまった。ナズナちゃんはヒーヒー言いながら笑っているし。
「まぁ、仲良いよな近所だし」
え、近所なの?と隣の席でひそひそと会話が繰り広げられている。D.D.Dは静かにお茶をすすっているだけだが、記録の地平線うるさい。特に直継と直継が面倒見てるちみっこ、興奮してんじゃねぇよ。
「え、あー…うん、まぁね」
でも、ソウジロウ君は特別だよ!もう仲良いのなんて通り越して大好きだよ!と言うのを忘れずに語尾に付ける。
「…は、はい」
「ソウジ良かったじゃん、大好き〜だってさ」
照れ照れとするソウジロウくんにナズナちゃんは鼻で笑う。この子、怖い。すると、何かを思い出したかのようにアイザックが声を出した。
「そういやお前、俺の部屋にまだあのでけぇクマがいんだけど」
「クマじゃない、大五郎だ」
「どっちでも良いわ、俺の部屋にあんなの違和感しかねぇだろうが」
「どーせまた行くんだから良いじゃん、元の世界に戻れたら考えてあげるよ」
「お前いるとベットが狭いんだよ、もうくんなよ」
「そんな事言ってるとあんたがモコモコスリッパ履いてるの町中にバラすからね!」
「なっ!んじゃあ言わせて貰うがスウェットが緩過ぎて前かがみになった時無駄にデカい乳と下着が丸見えなんだよ、誘ってんのかロリ顏女!」
「はぁぁ!?何見てんだ変態!!」
「それってパジャマですよね?」
「スウェット着てるとか色気ねぇ女だよな、それにサイズ間違えてダボダボなんだぜ。馬鹿だろ」
「しょうがないじゃん!勿体ないでしょ!」
「よく泊まりに行くんですか?」
「こいつが寂しいっつーもんでな、しょうがなく家にいれてやってんだよ」
「はぁ?夕飯作ってくれーとか甘えて電話してくんのそっちだし、よく泊まってけよって言うじゃん」
「ねぇ、あんたらさ本当に付き合ってないよね?とりあえずソウジが刀抜きそうだから止めない?カフェに衛兵が現れたらやだし、仮にもギルド長が取り締まり受けちゃうと格好つかないんだわ」
ぼりぼりと頭をめんどくさそうに掻くナズナちゃん。それに話の合間合間でガタンとか食器が倒れる音とかが聞こえていた。え?と隣を見回せばアカツキちゃんと直継がちみっこ達の耳を塞いでいた。それにD.D.Dの方では静かにお茶を飲んでいるかと思いきや凄いカチャカチャ眼鏡のブリッジを上げ下げしている。高山さんは何も変わりない。
「…そ、ソソウジロウ君?」
ソウジロウ君を見れば今直ぐにでも抜刀して切りかかって来そうで背筋が凍る。それになんか唯ならぬ殺気が身体全体から漏れ出ているし、アイザックに助けを求めようと見れば勝ち誇ったようなドヤ顔をしていた。なにその顏。
「なんだ嫉妬か、男の嫉妬は見苦しいぞ」
「…はっ、所詮"近所の人"でしょう?」
「なんだと?」
「僕は彼氏ですから、これから先そのスウェットの中身も全部見る事が出来るし花子さんのいつも見せない恥ずかしい姿も全部僕のものです、そんな小さい事今更気にしません」
「ちょ、ソウジ落ち着きなよ。あんた今言った事恥ずかしくて後で死にたくなるよ?」
「恥ずかしい、姿だと…?おいこらガキ」
「良いんだ、ナズナ。ええ、恥ずかしい姿もです」
なに恥ずかしい姿恥ずかしい姿連呼してんですか、恥ずかしいのはこっちだよ!!スウェットの中身って、そ、ソウジロウ君になら見せるけど、見せるけどさっ!なにアイザックもムキになって張り合ってるんだよアホか、ソウジロウがガキならあんたはおっさんだよ。と、まぁそんな事も言えずにアタフタしていれば「帰ります!」とソウジロウ君が席を立った。
「ああ、それとそのクマの大五郎は僕の家に引き取りますから」
残されたカフェの人々は語る。どうしよう、ソウジロウってあんな男らしかったんだ。と。
そして直継は語る、俺ソウジロウになら抱かれてもいい、と。そしてアカツキは蹴り上げる。直継の顎を。
(くそー!!なんだあいつ、ガキのくせに生意気過ぎんだよ、お前あいつのお守りだろうがしっかり躾しとけよっ!!)
(男の嫉妬ほど見苦しいもんはないんだっけ?)
(ぐっ…!!)
2014.03.03
とてつもなく長い文章になってしまい申し訳ありません。フリリクで頂きました、番外編でアイザックとのパジャマ経由での関係がバレてしまった時に周りの反応を知りたい、アイザックに挑発して欲しいとお題を頂きましたので楽しく書かせて頂きました。もう記録の地平線メンバーが愛しくて堪らなくなりました、もう家族みたいですよね。これを読んでいる貴方はソウジロウ派なのでしょうか?それともアイザック派でしょうか?
いつもご愛読ありがとうございます。これからも宜しくお願い致します。ではでは(^^)
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