■ フリリク 命刀釘様 川獺



「あ、花子だ」

任務が早く終わったのか予定よりも早く帰ってきた様子の花子は何故だか急ぎ足で何処かに向かっているようで俺は首を傾げる。報告だろうか、いいや違う。あいつはそんな事で急ぐ奴じゃないし見た事もない。

「ま、いっか」

別に気にすることじゃないとゴロンと元居た所へ寝転ぶ。ごろり、ごろ、ごろごろ。落ち着かねえ。目を瞑っても花子の事が気になる。

「ぶはっ、これじゃまるで」

ないないと首を横に振る。

はぁ、息を吐き出して仰向けに寝転ぶと広がるは晴天の青。んー、何だか眠くなってきちゃったな、ふあーあ。蝙蝠は任務行っちまったし、花子もどっか行ったみたいだし。

「つまん…ねー……」

ぐかーとイビキをかいて寝る俺、平和な昼。忍者はどこでも寝れるんだってどこかで聞いた事があったな、うん。でも俺は無理。布団の中か日向の下か木の背もたれが無いと無理なんだよなー。



変な声がする。鳴き声か、考えなくともこれは…。

「あれ、花子じゃん」

花子の周りには何かと変な鳥が集まってくる、俺はあんまり鳥は好きくないから鳴いている鳥はとりあえず無視。あれーとまだウトウトする目元を擦る。俺の頭を膝に置いて本当なにしてくれちゃってんのか。むしろそれに起きない俺ってやばくね、いやこいつが気配消すのうまいんだよ、半端なくうまいんだって、じゃなきゃ俺って忍としてどうなの。

「まだ眠いの?」

ぐるぐると考えを巡らせていた俺に目の前の花子がクスリと笑ってる。あーあ、俺なにときめいちゃってんだっつーの。きっと背景が夕焼けの橙に染まってるから可愛くみえるだけだろ。

「もう大丈夫。よっと…」

「えー、もう起きちゃうの?」

そんなにずっと膝の上に頭置いてられるかよっとじとっと睨んでみる。嫌な訳じゃないんだ、ただ他の奴らに見られたら恥ずかしいだろ。

「残念だなあー」

「なぁ、それよりどこに行ってたんだ?任務昼に終わってたんだろ?」

俺はそれに補足を付けるのを忘れない。偶然見掛けたんだと。花子はあー、うんと言葉を濁して言いづらそうにしている。

「え、何、言えない事なの?」

なら言わなくて良いぜと言うものの見掛けてからずっと気にしている俺、目が泳いでないと良いけどな。

「あっ、報告!報告だよっ報告!鳳凰様にさー色々叱られちゃったんだよねー」

私ったらおっちょこちょいだからさーと笑う花子に笑いが零れた。本当分かりやす過ぎなんだよなぁ。

「ふーん、そっか」

「ごめん嘘っ、嘘ついてるって分かってたでしょ川獺」

ちょっと余裕がありそうにニヤニヤと笑ってみる。本当は少しビクッとした、俺の事、何もかも見透かされてんだもん。

「本当はね…うーん、ちょっと待ってて!動いちゃ駄目だよ!」

そう言い残して一瞬で消えた花子。もう夜かー、なんだか今日は一日が早いような短かいような…ぼうっと薄ら浮かぶ月を見ながらそんな事を思えば後ろから気配がして振り向けば花子が立っていた。

「ねぇ、そろそろ気配消し過ぎんのやめない?怖いんだけど」

「やめない、取り柄がなくなっちゃうよ」

そうくしゃっと笑う花子、その笑顔が取り柄でなくてなんだと言うのだろう。
後ろに隠しているものに目が留まる。

「あ、これね、これこれ」

目の前に座り広げた風呂敷の上のそれは、俺の好物ばかりが並んでいた。

「え、どうしたんだよコレ」

「帰って来て急いで作ったのだよ、えへへ」

「手作り?すげーな、んにしても何で?」

そう、思ったのは何で俺だけに手作りでこんなにたくさんの好物を作ってくれたのかって事だ。こいつは蝙蝠の事も大好きだし、三人でいる時なら分かるけど。

「今日は川獺の川獺記念日だよ」

「え?」

「川獺になって今日で一年でしょ?」

当たり前のようにそう言って目をぱちくりさせる花子に俺は顔を抑えた。絶対赤い、だって顔めちゃくちゃ熱いもん。

「あーもうほんと好き」

つい口から出た言葉をお前は何て理解するんだろう。きっと私もだよ、蝙蝠も大好き!なんて天真爛漫に言うんだろうなと容易く想像出来て少し切ない。

「私も好きだよ」
「うん」
「え?好きなんだよ川獺の事」
「蝙蝠もだろ、分かってる分かってる」

その時、袖を握られた。ギョッと花子をみれば上目遣いでなんて攻撃力だよ。少し泣いてんのか?おいおいおいおい、俺なんか悪いことしたか?

「恋愛的な意味で好きなの、馬鹿」



「ほんと?」
「本当だよ、川獺のあほが」
「ちょっといきなり言葉使い汚くなってんだけど、まーいいや、俺も好き」



(蝙蝠帰ってきたら驚くだろーなぁ)
(へっへ、なんか勝った気分)


あとがき
フリリク、命刀釘様へ。ここまで読んでくださりありがとうございました。川獺くんは初めてだったので少し大変でしたが気に入って貰えましたでしょうか?夢主ちゃんと蝙蝠くんと仲良く三人でいつも遊んでいたら凄いいいなと思って書かさせて頂きました。これを書いた後に命刀釘様の言っていた六話を見返しもう感情移入を川獺にしていたのでうわああ、と机をドンドンしてしまいました。何で死んでしまうん?何で死んでしまうん?もう真庭忍軍の咬ませ犬さったらない。悲しい。ここのサイトの真庭は死にませんよ!死なせません!!ちぇりおー!!

管理人、ひまわり
2013.11.22

(感想ぶちまける。)

[ prev / next ]
第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -