▼ かさぶた 2話
「ね、ねぇ、戸田?」
話しかければ"あー?"と素っ気なく返される。ピザって十回言って?と言えば素直にピザピザピザピザピザピザピザピザピザピザと少し噛みながら十回言う。素直でよろしい。ちょいちょいとここは?と肘を指す。
「ひざだろ?」
「うわーい!引っかかってやんのー!」
ばーかばーかと舌を出せば、うわっ本当だと顔を赤くする。違う、こんな事がしたいんじゃないんだよ!
「そんで、ここ…どうしたの?」
「んあ?別に怪我しただけだけど」
あー、そうだよねー…と曖昧に返事をした。その返答を待っていたんじゃない。私も絆創膏の件について聞きたいだけなんだよ!
「めちゃくちゃ絆創膏ついてんね、びっしり」
「あーこれ?」
後ろに座るさっきの奴が出てきた、松井あんたに用は無いんだよ、松井と言えば私が戸田を好きと知っていて告ってくる輩だ。意味が分からない。
「花子、こいつ後輩の一年に保健室でちょめちょめしてたんだってさあ!えっろいよなあ〜」
まままじ?あんた何処まで聞いてんの、私は口角をひくひくさせる。戸田はちょめちょめって何だよっ!と松井を叩き、まぁエロいのは否定出来ねえ、と馬鹿笑いしている。
「ちょ、松井…そう言えばあんたに話があったんだった。こっち来て…」
私は松井の袖を引っ張り廊下に出る。えーちょっと花子、昼間からやめてっと嬉しそうに笑うのを無視して二人でしゃがむ。
分かる?あの扉の横の壁についている窓の下に隠れている状態。これなら、戸田にも見えていないだろう。
「ちょ、あんた今の話詳しく教えなさいよっ」
そう耳元で言えば、もう花子ってば大胆なんだからとおちゃらけるものだから頭を引っ叩いた。
「あだっ、冗談冗談」
「そんで?」
「保健室に行ったら後輩の女の子が居て、自分じゃあ上手く貼れないからやってもらったんだと。」
それだけ?ちょめちょめは?と聞けば冗談だよっと笑う。何だよとじろりと睨めば頬を染める、乙女か!
「いや、こんな近くで見つめられると照れるっつか。そろそろ戸田やめない?全然伝わってないじゃん」
「良く言われる、けど駄目なの…好きなんだもん」
「おい、てめーらイチャイチャしてんなよ」
頭上から声が聞こえ松井は"邪魔すんなよー"と上を見上げる。隠れていた意味が台無しだ、むしろ今の話聞かれた?私はギギギっと重たい頭を上げればそこには予想した通りの大好きな戸田が立っていた。
「授業はじまんぞー」
何だ、普通だな。聞いてなかったんだ、良かったぁ、私はホッと息を吐けば差し出される手にドキリと胸が鳴った。
「お前かよっ」
私は松井の手を雑に掴み起き上がる。
あーあ、戸田にどう接したらこの気持ちが伝わんだろうな〜。
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