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▼ つんつん。01




最近よく俺の背中の賽銭箱に500円玉が入ってるんだ。5円や50円どころじゃねぇ、500円だぞ!?500円!!

「おい、ニコ坊!もうすぐ6000円だぞ!?このままいけば満願神社の再建なんてあっとゆうまじゃねえか!?」

「あ、兄さん…」

「いったい誰がいっつも賽銭箱に入れてってくれてんだろうなあ!かれこれ10回になるが姿を見たことがねぇ!」

その日も俺たちは月光町を歩き回る、人は賽銭箱を見ても見て見ぬふりをする。今日もそれは変わらねぇ。

「あっ、おじゃる丸じゃねぇか!」

未知の角から出てきたおじゃる丸と虫によお!と声を掛けた。
ニコ坊も虫とと世間話を楽しんでいるようだ。

ちゃりん!

「ん?なんか今、音がしなかったか?」

「おっほっほっほ、ほれ犬!ジャンプじゃ、ジャンプしてみるのじゃ」

笑っているおじゃる丸に疑問を抱きながらもジャンプしてみると賽銭箱の中にちゃりんちゃりんと異物が入っている音がする。

なっ!まさかっ、と後ろから背負っている賽銭箱を降ろし中を確認すると、出てきたのはやはり500円玉。

「おい!ニコ坊!見てみろ、また500円玉だぜ!」

ほ、ほんとやねぇと何かを隠している表情に俺は眉を潜めた。

「やっぱり、お前、誰がいれてんだか知ってるだろ」

「ええ!?あ、兄さん、許してっ口止めされてたんよぉ〜」

胸ぐらを掴み揺らせば、ワタワタと慌てているニコ坊はね?ね?と周りに助けを求めている、て事はお前等も知ってたんだなと攻めよるとおじゃる丸が尺で口を抑えて笑う。

「内緒にするも、知らなかったのはそちだけじゃ、のう?電ボ」

「は、はい〜、よくオコリン坊様がニコリン坊様といらっしゃる様子をよく見かけるものですから」

「たまたまじゃ、たまたま三度程は目にした事があるの」

「ま!まじかよ!三度も!?」

てことはニコ坊は十回とも見たって事だよな、俺はじとっとニコ坊を見やる。

「おい、ニコ坊」

「すんまへん、兄さん」

しょぼんと落ち込むニコ坊は俺に一度も嘘をついた事ないくせに今回ばかりはずっとついてやがった、一体どいつが口止めしたってんだ。





「説明もちゃんと聞かず走って行きはった〜、兄さん大丈夫やろか」

「おーほっほ、1000年生きていると言ってもまだまだ若いのう」

「いやぁ、先輩として助言してあげるべきだったかな!」


急げっ急げっ、聞いた所によると商店街の花屋で働いてるみてぇじゃねえか!
なんだよ、なんだよ、勿体ぶりやがって!いや、でも毎日通っているがあそこに女の店員なんて居たか?一回も見てないぞ?

ききーっと足を止める。

「着いたぞ」


そろり、中を覗くと若い女が花束を作っていた。肌も白くて小柄でいかにも女って感じだな。

あ、あれはケンじゃねぇか。ニマニマあの女の周りをうろちょろしてやがる。次はオバケ屋敷の館長っ、冷徹斎まで!?


「なんだあの女」

やけに人気じゃねえか、と呟き出てきた館長に話を聞いてみる。

「花子ちゃんの事?可愛いよねぇ、え?最近引っ越して来たんだよ」

そういう事か、知らない訳だ。

俺は夕方花屋が終わるまで外で待っていた。お疲れ様でしたーと言う声を聞き身構えた。

な、何を緊張してんだ俺は!

賽銭の事を聞くだけじゃねぇか!


「おい」

「−−−っ!!?」

驚き過ぎて腰を抜かしたら女の目の前にとてとて移動し背中の賽銭箱をくいっと指差す。

「この賽銭箱にいつも500円玉を入れるのはお前か?」

なんだ、この女、口を魚みたいに開け閉めして。顔も真っ赤で。

「おおおおおオコリン坊さんっ?!な、なんで私の事を?」

「ニコ坊から無理やり聞いた、ただお礼が言いたくてな、邪魔したな」

くるりと背中を向け満願神社に帰ろうと歩き出すと後ろから"あの!!"と言う声がして振り返る。


「好きです!またお賽銭あげに行っても良いですか?今度はちゃんとオコリン坊さんの正面から会いにっ」

「おう!………は?」

爽やかに振り返ったは良いものの、自分が思っている意味とこの女の意味とでは少し違う事に気がついた。

「ちょっと待て、俺は狛犬だぞ」

「知っています」

「好きって満願神社じゃなくて…」

「満願神社も好きです、だって…オコリン坊さんがいるからっ」


ポッと顔を染めた女に俺は顔が青く冷や汗しかたれない、これは…退却だ!!!


「あっ!オコリン坊さぁん、待ってぇ〜!!


「つ、ついてくんじゃねぇ〜!!」



彼女がこのオコリン坊を好きなったのはまた別のお話。まだ引っ越して来たばかりの頃のお話です。

(感想ぶちまける。)


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