▼ 君の好きを聞く為の意地悪。
「いやぁ、セフレがいるって良いもんですねぇ」
は?私は前のボタンを閉める手を止めて半裸でベッドへ座る男を見る。なに言ってんのこの男、頭と顏だけは良いと思っていたのに。
ちょっと涙が溜まってきたからそれを隠す為に俯いた。
「どうしたんですか?」
なにそれ、わたしがセフレって言われてどうも思わないと思ってるの。ぶん殴ってやりたい。
「ねぇ」
「うるさい」
「ねぇねぇ」
「話掛けてくんな」
もう嫌だ、早くこの部屋から出たい。「好き…です」って少し頬を赤くして頭を掻いて告白してきたのはそっちじゃないか。それにずっと付き合っているもんかとおもってた。…わたしって馬鹿なのかな。
「花子サン?」
「もう名前呼ばないで」
「………」
「なんで?花子サン、俺のほう見て理由教えてよ、ねぇ」
なんで顔を覗き込んでくるの?きっとわたしの顔は涙で濡れて人に見せれるものじゃない。ぐしぐしと目を擦れば「あらあら」なんて飄々とした声がしたからまた哀しくなった。
「もうやだ」
「理由は?」
「……き、だから」
「聞こえないんですけど、なに?」
「あんたが…すき、だからっ」
もうしつこいくらいに聞いてくるそれにイラついて鼻を啜りながら大きな声で恥ずかしいことを叫んでしまった。そういえばずっと好きだ、好きだなぁと思っていても恥ずかしくて口に出した事は一度も無かった気がする。
「好きですよ、花子サンは?」だなんて聞かれても「…っそういうのウザい!」とか「い、言いたくない!」だなんて可愛げがない言葉で当たってしまった事もある。
そう思ったらボロボロと涙が膝に落ちてきた。もう、ほんとやだ。
「ちょっと、そんなに泣かないの」
横からぎゅうっと抱き締められる。上半身に服を纏っていない彼からはダイレクトにいつものフレグランスのいい香りがしてもうこの香りは嗅げないのかだなんて考えてしまって涙が止まらない。この香りもカラシンも全部全部大好きだったのに。
ぎゅうっとされて背中をぽんぽんっと叩くカラシンの手。
「ごめんね」
「…ふ、ぅ…ぅっ」
「俺も君が大好きだよ」
「…っ…へ?」
顔を上げれば少し困った顔を浮かべているカラシンがいて、私は鼻水と涙で顔を濡らしたまま首を傾げる。
「好きだよ」
「え、ど…は?」
「好き」
さっきよりも力を込めてぎゅうぎゅう「ごめんね」と言ってくる、意味不明なんだけど。放心状態でいればカラシンがあのねと顔を覗き込んできた。
「いたっ、痛い!やめ、ごめんね!!もうしない、もうしないからっ」
もうその理由を聞いたら腕が止まらなかった。それはもう鬼神のごとく彼を殴り続けた。私も悪かったとは思うけれど、鬼畜過ぎるだろ乙女の心を盛大に傷付けてくれやがって。許さないんだから、でも…嘘で良かった。今度からたまには「好き」って言おうと思う。でも後二、三発は殴っても良いよね。
「イジワル!!…死ぬほど好きだよバカ!!」
「も、痛いッ!お、俺も好きっブフォッ!!」
(君からどうしても「好き」が聞きたかった)
2013.03.01のカラシンさんに惚れた記念。「は?」って言った貴方に惚れました、きっと貴方はMに見えてすっっごいSだと思います。ヘラヘラしててもきっと凄いんでしょ?そうなんでしょ?という私のどうしようもない妄想。少しチャラい敬語を使う彼が好き。
同じ思考の方、お話しましょうか(^^)笑
2014.03.03 雛祭り!
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