▼ うちのギルマスが可愛い件について。
「お前は馬鹿か!」
ここでガードしてどうするテメェ馬鹿野郎!と上から怒鳴られる。きっと機から見たら大の大人が何を子供を虐めてるんだと思うかもしれないけれどここはエルダーテイル。ここが私達いま住む世界だ。
そして武器を持ち戦う事が私達ギルド黒剣騎士団である。
「すみませんすみません!」
「ワザとやってんじゃねぇだろうな!!」
私はまだギルドに入って日も浅い、しかし既にギルマスのそばへと昇格したわけなのだけれど…このギルドのギルマス凄い怖い。
うさぎのごとくピィーっと縮こまっている私を仲間たちがまたかと心配そうに私を見ている。
「まったく…ほらよ、喉乾いてんだろ」
「あ…はい頂きます」
ぽいっと投げられたドリンクを慌てて受取り、乾いた喉を湿らせた。隣にドスン!と音がするように腰をおろすギルマスを見れば少し耳が赤いようにも見える。
「そ、その防具いいな。この前のクエストのヤツだろ?」
「ええ、あの時はありがとうございました」
辺りに誰もいないか確認をしているのかやたらキョロキョロしている。そして黙ったかと思えばその静かな空気を割るように大きな声を出す。
「…その、怒鳴って悪かったな…「あ、ちょっとギルマス〜」うおおお!!あの調子じゃあ次のクエスト留守番だ馬鹿野郎!!」
「すみません…が、頑張ってはいるんですが…」
「テメー見て分からねぇのか!今、説教中だ!」
ギルマスがギロリと書類を持ってきた仲間を睨むと上擦った声で返事をし、すぐさま離れて行く。ま、また怒られちゃった…と肩を落としていればふと髪に触れた手にドキリとした。ゴツゴツして男の人らしい大きな手だな。
「おいおい、お前髪に枝が絡んでんじゃねぇか」
「え、本当ですか?」
いそいそと枝から私が痛くないように髪の毛を解いている。顔の近くに寄るギルマス…アイザックさんを盗み見る。いつもの血気な盛んな感じとは違って近くで見ると意外と整った顔をしてる…
「な!なに見てんだ馬鹿野郎っ!」
「わ、すみません」
なんだか今日は謝ってばかりな気がする。しょぼんとしながらギルマスに頭を下げた。
「いつもすみません、ギルマス…」
「ギルマスじゃねぇ!アイザックさんと呼べ!!」
「あ、はい…アイザックさん」
「うっ…こ、今度から絶対そう呼べよ、絶対だからな分かったな!」
うちのギルマスは怖いんだか優しいんだかよく分からない。あ、これが世間一般で言われる所の飴と鞭?なのかな。
ーうちのギルマス可愛いよなあ。好きな子に意地悪しちゃう小学生つーかさ。そうそう、好きって丸わかりなのに花子も鈍感なんだよなあー。ほんと、いい大人が照れて何が面白いんだかな、あはは。
そんな黒剣騎士団の平凡な日常。
みんなギルマス大好きです。
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