▼ これが私達のリアル。
「や、やだ…こんな事したらもう戻れませんっ」
「戻れない?戻る必要などないですにゃ」
そう私を翻弄する彼には反抗する私の手は届かないようだ。このリアルを生きている私達の身体は現実と同じではない。本当の私を好きになってくれるとは限らないし、むしろ私に気づいてくれるのだろうか。堪らなくなり言葉を漏らした。
「貴方は本当の私に気づいてくれますか?」
「貴方はこの姿ではない私も好きでいてくれるんですか?」
これで首を横に振られたら立ち直れないのは私のくせに、そう思いつつも強く班長を見つめた。
きっと目には涙が溜まっている。
「はぁ」
溜息!?わ、私、しつこかっただろうか、面倒臭かっただろうか。班長はいったん伏せた顔を上げて微笑む。
「愚問ですにゃ」
そう言い目元を優しく指で拭ってくれた。ああ、すっかり気が抜けて涙が溢れてしまった。貴方はずるい、こんなにも私の心をかき乱すだなんて…本当にずるい、猫です。そんな貴方に翻弄されながら今日も朝を迎えた。
「愚問ですにゃ、か……」
私は今、リアルの世界にいる。リアルとは私が元いた世界。武器や防具は存在する事はなくただ行き交う人々は平凡な日常を毎日毎日おくっているだけ。
最近やってないな、ゲーム。
そう思いながら会社の近くのカフェで読書をしていた。本当に平凡。だけどよくよく考えたらあのゲームの中で出会った事がある人達とこのリアルですれ違っていたり、もしくは会社の営業先や隣の子だったりと考えたらなんだか面白くて一人で笑ってしまった。
慌てて口元を本で隠す、見られてないだろうか完全に変な人だよね。
そうアタフタしていれば向かいの席から声を掛けられた。
「すいません、相席しても宜しいですか?」
「え…ほ、他にも席空いてますけど…」
「ここが良いんです、花子さん」
その声と雰囲気に目を見開く。ああ、なんて事だろう、夢なら覚めないで欲しい。
ちゃんと見つけてくれたんですね。
やっぱり私は貴方が大好きです。
(もしかして…班長、ですか?)
(ふふっ、愚問ですにゃあ)
あとがき
リアルのにゃん太班長とか想像できない、めちゃくちゃ萌える。どうしよう、声は渋いけど三十代半ばのエリート商社マンで会社では自分にも相手にも厳しいけど帰って飼ってる猫にベタベタで、さ、ゲームゲーム、始めますにゃとか言ってたら!!どうしよう!!考えていたら止まりません。どうか私に愛の鞭をっ。
2013.11.04
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