■ お世話された。

もう大変だ。別に花子さんは軽いから抱いて帰るのはいいんだけど。この店の支払いとか家までの帰り道とかこの人を起こしながら行くのがたいへんだった。

肩に担ぐのは吐きそうと言っているこの人には辛いだろうと俗にいうお姫様抱っこをしている。すやすや眠る花子さんがいつもとは真逆に俺の胸にすり寄ってくるものだからなんだかこそばゆい。

「花子さん、鍵」
「だれがガキよーあんたの方が」
「かぎ!家に着いた、別に扉壊して中に入る事も出来るんだけど?」
「ちょ、待って…か、鍵」

とりあえず貰った鍵で部屋に入り布団に直行させた。ポスンと音がするように布団に落とし、水を持って来てやる。唸っている花子さんを見て俺は少し苦笑した。いつもしっかりしている花子さんが一人で歩けなくなるまで呑むなんてかだいぶストレスが溜まっていたんだろうな。

しかも酔ってから話の大半はサビハクヘイって奴のことばかり。

「サビ…か」

息を吐き、うっとおしい服を脱いで自分も隣に寝転んだ。ベットがギリシと軋む。横を向けば花子さんがすやすやと眠っている。たまに、眉間にシワが寄ったりするのは気持ちが悪いからだろう。なんだかまだうなされているみたいだ。

「花子さん…」

近くにあった手を握ると花子さんが口を少し開いた、なんだろうこの痛み。呼ばれたのが俺の名前じゃないから所謂やきもちと言うやつなのだろうか。多分違う、これは俺がやきもちとか言う以前にこの人の中にはサビという奴しかいない。俺が入り込むスペースなんて毛頭なかったんだ。だからこの胸の痛みは俺の居場所がないことへの…。

「白兵くん…」

この人がぽつりと吐き出すこの威力は俺を殺せるかもしれない。きっと姉ちゃんに言ったら怒られるな。

とりあえず、今はこうしていられればいーや。そうして、俺は幾分も小さく白い手を握り直して眠りについた。


(明日のメシはなんだろうなー)

(comment*☆.)


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