■ 酔いつぶれた面倒な客。
「らからね、もお嫌らってずうっとさあ」
「………うん」
どうしよう、花子さんすげぇ酔ってる。酒は不味いだけだと思ってたけどここまで人を駄目にするとは思わなかった。俺は手を組み話を聞くしかない。
流しちゃえば良いって?さっき「ちゃんと聞いてるの?」って言われた時に適当に返したらひっぱたかれたから聞いてるふりは出来ない。正直面倒くさい。こんなんで家帰れるのかよ。
「ぐすっ、…っぐすん」
「!?」
え、なんでいきなり泣いてんの?!俺が聞いたふりしてたから?え、と、悲しいから涙が出てるんだよな、ここは素直に謝るべきだよな。
「花子さん…あの、ごめ…」
「白兵くん…」
ん?はくへい?誰だそいつ。俺が悪い訳じゃないのか?一人でメソメソ泣く花子さんに掛ける言葉が浮かばない。原因が俺じゃないなら尚更だ。
「白兵くん…ろうしてるかなぁ、モテるもんらぁ、もーやだ本当ううう」
冷や汗がだらだらと流れる。めっちゃ泣いてるどうしよう。姉ちゃんが泣く事が無かったから慰め方が分からねえ。
でも、俺が泣いた時は確か…
ぽん、ぽん。
「じぢがぐんっ…あだま…わたじ子どもじゃ…」
ああもう、鼻水まで出してるじゃないか。顔から出るもん全部出してぐっちゃぐちゃ。
「良いんだよ、俺が泣いた時は姉ちゃんがこうしてくれたんだ。それで?」
「バイバイって、お互い違う所で幸せにって言ったのはわたしなのにっ、わたしが」
「うん、うん」
「わたしが一番寂しいのっ」
ああ、そうか。この人は寂しくてないてんのか。はくへいって奴の事を思ってこんなに涙を流してる。明るくて、素直で、優しくて、綺麗な花子さんがこんなに今はぐちゃぐちゃで、例えるなら味噌汁に入れた筈のじゃがいもが煮過ぎてぐちゃぐちゃにって…これは違うか。
でも、こんなに思われてるなんて。
「その"はくへい"って奴は幸せ者だよ、花子さん」
ああもう、なんだこれ。いつも俺よりも大人なくせになんで今こんなにメソメソ泣いてんだよ。なんか俺のこう、胸の部分がむずむずする。変な気分なんですけど。
「寂しいならさ、俺…あれ、花子さん?」
「…ぐー、…はくへいくん…ずびっ」
…寝てる。それになに言おうとしたんだ、俺。でもまぁ、この人が寂しいならずっと一緒に居てやっても良いと思ったんだ、花子さんは怖いけど今の生活は楽しいし。元の場所にいる時にはこの変な胸のむずがゆさもなかったけど、別に嫌じゃないし。
あ、でも、そんなこと言ったら姉ちゃん怒るかなぁ。
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