■ お買い物しましょ。
ちらり、つんつるてんな服装をさせたままだとなんか良心が痛む。別に着ている方はなにも気にしていない、それにいつ帰るかもわからないしそのまま居て貰っても良いのかもしれない。
ちらり、漫画を寝ながら読む七花くん。
字は読めないらしいけど絵を見てるだけで面白いらしい。いやでも、本当ぱっつんぱっつんだよ。残念だよ。これは駄目だ。
「よしっ、出掛けよう!」
漫画に夢中でわははと笑う七花くんは支度をしろと言うわたしにも気づいていないみたいだ。近くにより素早く漫画を手元から没収すれば、ポカンとわたしを見上げる。
「なにすんだよ」
「お買い物行くから支度しなさい」
支度、と言っても七花くんはつんつるてんな格好から前に鳳凰さん等が着ていた中でも大きなサイズのパーカーと下にジャージを履いて貰う。これで少しは外に出ても恥ずかしくはない筈。スウェットじゃないし、パーカーとジャージだし、と何回も頭の中で復唱する。
七花くんを見ればやはりそれは七分丈になんている訳で、やはりつんつるてん。
でも、だんだん普通に見えてきた。
そうだよ、ジョギングとかしてきたんだよ。その格好で隣は歩きたくないけどジョギングの後だからしょうがないよね。それにすぐ買ったらその場で着替えさせればいーし。
「いざ出陣じゃ」
「どこの掛け声だよ」
そんなこんなで我が家から一歩踏み出した七花くん。リアクションは想像通りで見ていて楽しい。
「うぉぉぉ、近くで見ると更に不思議だ」
車を指差す七花くん。ベランダからナンダアレと訊いてきた事がある。その時は説明しようと思ったのだが案外言葉が出て来なくて最終的にwiki様で正しく教えてあげた。けれど長ったらしい説明に途中から横に流していた気がするからきっと実物を見て驚いたのだろう。
ーチャリンチャリン!
「うおっ、花子さん危ない!」
音が聞こえていきなり私の前に出てくるものだからビックリした。って大家さんじゃない!やばいやばい、この人鳳凰さんと錆くん
は面識あるし、また変なの増えたと思われちゃうよ。
「あーら、あらあらあら」
「お、大家さん、こんにちわ」
「知り合いか?」
「山田さんこれまた大きい男連れて!この前のイケメンは別れちゃったの!?」
うう、大家さん。そういう事言わない方がいいと思います。もし、七花くんが彼氏だったらどうするんですか。イケメン?なんの事だよ!ってなりますよね。
「いけめん?別れた?、なんの事だおばさん。美味いのかそれ」
「なによもう天然?可愛いわねー、また全然違ってこういう子もいいわね!おばさん好きよ!」
「………花子さん」
「あっ!もうこんな時間だ!すみません、この後用事が会って〜、じゃあ!」
七花くんの手をとってそそくさとその場から退散すれば後ろから「あら残念またね」という声が聞こえてきて七花くんが「うぇっ」と声をあげていた。七花くんからイケメンなにそれおいしいの?なんて事聞けるとは思わなかったから意外な収穫だ。
「なぁ、イケメンてなんだ?」
「え?かっこいい男の人、かなぁ」
「ふーん」
食べ物だと思ってたのかなぁ。
なんだか口を尖らせてつまらなそうだ。
そうこうしてる内に、安くてシンプルな服屋さん困った時にはUNiQLOさんに辿り着いた。ここまで長い道のりだったなぁと自動扉をくぐる。ビクつく七花くん可愛い、ぬぉ!とかいちいち可愛いよね。
「とりあえず、七花くんは体が大きいから全部買わなきゃね」
とりあえずジーンズから何本か持って試着させてみれば、腰回りがダボダボすぎて丈の長さが足りても脱げ落ちてしまう。私は良い事を思いついた。スタッフさんに訊けば良い!!そう思いたちすぐに行動に移せば「お客様は身長は高いですがスラリとしていらっしゃるので上はLかXLでも大丈夫だと思います、下はフィットタイプのものにして一番大きなサイズは如何ですか?」とか色々お世話になってしまった。
でもその甲斐あって、フィッティングに立つ七花くんの服装はバッチリだ。
訊いていなければ何時間と試行錯誤していた事だろう。丈の直しを確認して貰って、その今着ているもののサイズで上を何枚か購入して、それとパジャマのスウェットを一番大きなサイズで購入した。
これくらいあれば大丈夫かな。
「七花くんこれも似合いそう」
「いやいや、一枚でいいよ勿体無い」
「えー絶対似合うのに」
「…俺のよりあんたのを買えよ、あんたは小さくて可愛いから何でも似合いそうだ」
「だ、誰があんただっ!」
頬をぽりぽり掻きながら苦笑いする七花くんに拳を上げる。もう、可愛いとかどこで習ったんだ。いつも読んでる漫画かな、変な事学ばないと良いけど。
まぁ、今日は可愛いって言ってくれたから許してやる。
「私はいーの、よし!レジ行こう、そんで美味しいご飯食べにいこう、久々に居酒屋行きたい」
「やったー」
[
prev /
next ]