■ もう躾した回数忘れた。


「ひぃぃぃぃぃあああ!!」

怖いい、この高さやばいきっとトトロに抱きついてる景色はこんなものなんだろうか、いやトトロは2mだからもっと高い。しかもこれ肩車、わたしの座高足したら2m半は超えてるよね、もう涙目なんでやめて下さい。

「もう下ろしてぇぇえ!!」

公開処刑だよ。公園来てみれば、子供連れてる父親が肩車していて「なぁ、あれしてみたい」なんて言うから。てっきり乗る方かと思って「えー自分の身長考えてよムリムリ、腰が…!?」って言いきる前に担ぎ上げられてこの状況に至る。きっとこいつは分かってやっている。

だって肩車して"走る"必要性を感じない。

わたしが恐がってるのを楽しそうにしているのがバレバレなんだよ、目を蘭々と輝かせやがって!公園には子供連れ、赤ちゃん連れが多くいらっしゃる訳で、視線がわたし達に釘付けなんですよおおお!!

「いやぁぁ、もうやだぁぁ!」

「え、なんで?なんかさあ、俺もすっげー小さい頃に親父にこうされてた気がすんだよな。あんまり覚えてないけど懐かしい感じがするんだ」

「うわぁぁん!!」

マジで下ろしてよもう駄目だよお、なにあの頃思い出してしみじみ語っているんだよ、子供達がワラワラ集まり出してる恥ずかしいよお。

「わ、なんだ?すげぇ小さい子供たちに囲まれた」

ピタリと止まった七花にしめしめと思い、子供たちが危ないから静まれと言うとつまらなそうにわたしを地面に下ろした。少しふらつきながらも地面をしっかり踏みしめる。ベンチに座りたい。

「ボクもあれやってー」
「ずるいボクもー」
「おにいちゃーんわたしもやってー」
「ダメだよぼくがさきー」

ははは、存分に戸惑うがいいさ。裁きを受けるがいいよ。わたしはそこのベンチに座って高みの見物をしよう…かな?

「はは、なんだこいつら踏み潰しちまいそうだな」

踏み潰し…

「たかいたかい?とりあえず上にぶん投げればいいのか?」

たかいたかいやばいやばい!そんな事したらわたしが裁きを受けちゃうって!ほらっ、親御さんもあそこで心配そうに見てるからねっ!とりあえず私はベンチから走って七花くんの元に行って子供を投げそうになっているのを制した。まずどこからつっこめばいいのか。

「とりあえず、おすわり」

目線を合わせたところで「あのね」と話し掛ける。子供は大人よりも力が弱い事、自分よりも弱い者は乱暴に扱っちゃいけない事を目を見て強く言った。素直に「うん、分かった」と言った七花くんに最後振り返りながら怪我させたら夕飯抜きと笑顔で宣告しといたから多分大丈夫だろう。

公園にとても似合う穏やかな笑い声。

わたしが座ったベンチからは七花くんとそれに群がる子供たちが見える。七花くんは子供たちと楽しそうに遊んでいるみたいで安心した。七花くん自体も子供のようだから体格は違えども合うのかもしれない。

「おーい、花子さん!」

たまに手を振ってくる七花くん、こう見ると可愛いんだよなー。原作での残虐な感じは微塵も感じない。子供のお母さんなのだろう若い奥さんと仲良くなっちゃってるし、天然なタラシなのか君も。そんな人がもう1人いたなぁと頭に思い描いた。わたしは自分で思っているよりも幾分諦めが悪くそれでいて未練たらしいみたいだと溜め息をつく。

「花子、どうした?」
「ん、あれ?子供たちは?」
「もう帰ったよ。久しぶりに身体動かしたから楽しかった。花子さん、ありがとな」
「(もう夕方か…)うん、じゃあ帰ろっか」
「腹減ったな〜。今日は俺あれがいい、茶色いドロドロした…」
「はいはい、カレーね!」
「そうそう!それだ、俺はそれを言いたかったんだよアンタ分かってるな!」
「あんた?」
「…花子さん」

なんか大きな子どもができたみたいだ。公園から帰りながら夕暮れの景色の中を夕飯の話をしながら帰るなんて、よくドラマの中とかCMでよく見る光景だよね。

「お腹空いたから早く帰ろうぜ」
「え?ぁ、ちょ!っやめぇぇぇ!!」

うん、前言撤回。
お母さんを俵担ぎにするトトロはいりません。あ、そこ左なのに。


(comment*☆.)


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