■ 躾A.一人で寝かせたい
「なんでだよ、やめろよ」
その手をやめろよ。私が必死で運んできた布団をあろう事か止めに入る七花をにらむ。何回ダメって言ったら分かるんだ。七花くん私と同じ24歳だろ少しは人ん家に住まわせてもらっている事を考えたらどうだろうと溜息を吐く。
「きみいくつ?」
「え?多分、24だけど」
「だよね、だから…ぶへ!」
強行突破しようとしたら布団を押し返され私は布団をもろに顔に受けてその場に尻餅をついた。なぜだ、なぜわたしがこんな仕打ちを受けなきゃならない。
「…っばかばかばか!なんで24にもなって1人で寝れないのよ!!」
「なんでって言われても寝れないもんは寝れないんだよ」
今迄ずっとお姉さんと一緒に寝ていたから寝れない一緒に寝ようとまぁ駄々をこね始めた訳です。下心は一切ないと思うけど。とがめとのあんなシーンを見ているあたりいやだ。
「もう、白兵くんがいい…」
「誰だそいつ」
「別に…とりあえず1人で寝る事に馴れるの!あんぽんたん!」
「あんぽ…?」
布団を剥ぎ取り無理矢理敷けば渋々とだが布団にもぐってくれた。…足が出てる。
「なぁ、布団が小さくて寒い」
「そんな目で見ないで」
まるで捨てられた子犬のように見つめられて意志が緩みそうになる、馬鹿野郎。
でも、わたしはそれを断固阻止する。可哀想だけど。
「もぉ、じゃあ私のベットの横とかなら良い?」
「そこまでいいならよくね?」
「良くないから、男の人と女の人は普通は別々で寝るもんなの!後一緒に寝れるとしたら好きな人だけよ!」
なんか恥ずかしくなってきた。とりあえずそうなのっと電気を消す。真っ暗な中でモゾモゾ七花がうずくまるのが分かってまた少し可哀想に感じてしまった。もうこんだけ世話がかかるなら子供としてカウントしていいんじゃないの?
「人肌恋しいってこういう時に使うのか、なぁ人肌恋しいんだけど」
やっぱり却下しよう、そうしよう。
「おやすみ〜」
「……おやすみ」
自分の部屋へ行きベットへダイブする。もう疲れた、トイレの行き方から風呂の入り方まで時代が違うと一から全部教えないといけないし、それに加えて七花くんは恥と言うものを知らないから隠そうともしないし風呂は本当に参った。何を言っても首を傾げて「なんで?」だから最後には桶を当てさせた。
はぁ…もう寝ようと布団に潜り込む。明日からまた仕事だ、うとうとしてれば直ぐに寝てしまった。
カーテンから漏れる朝日で目が覚める、なんか今日は布団があったかい。外に出たくないなぁとボーッとしていれば「んごっー」なんて声が後ろから聞こえてきた。完全に頭を起こせば腰に手が回っているし多分足が下から出ないようにと丸まっているのか本当に全身を抱きかかえられている。
「なんでここにいんの…」
「ぐー」
ぐーじゃないわよ、力を込めて鳩尾に肘をお見舞いしてやる。
「…っぐ!ってぇ〜…なんだよ姉ちゃんってあれ?」
「おはよう七花くん」
横にある顔を見上げて言えば、あー…っとがしがし頭を掻いている。きっと寝ているうちにトイレに行きたくなって帰る時に部屋を間違えたオチだろう。そう言えば「多分そう…かな?」と首を傾げた。朝から可愛い、この妖精。
「今日から1人で寝ようね」
「分かってるよ」
そう頷いた筈なのだが、筈なのだが…毎朝起きると横には七花が寝ている。起きればあれ?っと首を傾げるばかりできっと無意識のうちに人肌を求めてしまっているのだろう。きっと部屋に鍵をかけても扉を壊して入って来そうだからもう放っておこうと思う。
(私も人肌恋しいのかな…白兵くん…。)
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