■ 泣かないで
いつものように何気なくおくっていた毎日を大事に過ごす。
君の仕草や笑い声を忘れないように。
私は君が好き。
この言葉を君が忘れないように手を握って言うのが日課になった。
白兵くんは相変わらず私から好きと言われるのは照れてしまうみたいで照れ笑いをする。
「私は君が好き」
「…ふふ、慣れないでござるなあ」
でもその可愛い仕草の後に必ず「拙者の方が好きでござるよ」と頬にキスをくれる。頬から離れる時に視線が合い額がコツンとぶつかり二人で笑う。
幸せだ、好きだ、なんて言葉がじんと心の中に溶けていくようなそんな感じ。
いつも思うけどほんと綺麗な瞳だなと思っていればきょとんとした顔で白兵くんが此方を見ていた。少し見過ぎてしまっていたらしい。
「どうしたでござるか?」
「いや、あのね…瞳が綺麗だなって…」
こんなの今更だよね!っと一人で慌てていると白兵くんが「綺麗…」と、ぼそっと呟やいた。
「?…私は初めて見た時から綺麗って思ってるけど…白兵くんは嫌いなの?」
少し目を伏せながら考え、口から出た言葉は冷たい何を考えているか分からないとは良く言われたと言うとても私には考えられない言葉ばかりだった。
伏せられた表情のなく見える顔は私には少し悲しげに見えてそんな事はないと口にしていた。
「白兵くんは優しいよ!あまり表情が変わらなくて考えるのがゆっくりだから誤解されやすいだけでそんな事ない!私は…全部知ってるよ?」
白兵くんはハッと顔を上げるといつものように静かにありがとうと微笑んだ。
「初めて言われたでござる、花子殿に誉められるなら人と違うこの異質な髪も瞳も全て愛しく思える」
白兵くんが摘まんだ髪を私も撫でたくなりてを伸ばす。すると私の世界は反転した。見えるのは天井と真剣な顔だがしっかり耳を赤くしている白兵くんの姿。
「花子殿」
名前を読んで愛しく唇を何度も付ける、それは唇から首にどんどん下りていって終いには服の中に手が入ってきた。
「あっ、あの、白兵くん?」
いつにもまして積極的な白兵くんに危機を感じて声を掛ければそれはもう色っぽく息を荒くしながら首を傾けるものだから私も心臓がどっどっどと大きな音をあげ始める。
「駄目でござるか?拙者はだいぶ待てに耐えてきたと思うのだが」
確かに幾度も幾度もラブラブなシーンの際に邪魔が入り大人な行為はあまりなかったがいざするとなると少し恥ずかしい。唇を舌でペロリと舐める白兵くんにどきりとして身じろぎをするが動けない。
少し強めに捕まえられた腕、私は「落ち着こう?」とその手を離そうと身をよじるがいつものように言う事を聞いてくれない。白兵くん?と少し焦りながら名前を呼べばぶつかった瞳にもう私は何も言えなくなってしまった。
「…花子殿、貴方を何もかもこの記憶の中に消えないよう刻み込みたい」
(君はその時、泣きそうな顔をしていたから)
(私は頷き微笑んだ、泣かないで)
−−この日々がもうすぐなくなる。
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