■ 拝啓ぐうたら星より。
なんだここはと落ち着いた物言いで聞いてきた宇練さんに説明した所、すんなりと納得してくれた彼はよいしょっと壁際に腰を下ろした。
「じゃあ」
「え?じゃあじゃないですよ!宇練さんもう寝るの?もっと楽しみましょうよ!目瞑らないで下さいっ」
うっすらと瞼を開けた彼はえー、だってどうしようもないじゃんと言い残してまた瞼を閉じてしまった。どうしても彼と交流したいと思った私はソファに座る。
「あー、フカフカ」
「………」
「枕もこのクッション使えばー、はぁーこりゃぐっすり眠れるわあ」
「……(ちらり)」
「じゃあ、おやすみなさい」
「そこを俺に譲れ、お嬢さん」
お嬢さんって言葉にきゅんとした私は直ぐにどうぞどうぞっと場所を譲る。白兵くんは彼に密かにときめいた事に気づいたのか私の袖をぎゅっと握って離さない。
「ふかふかだな」
「よく眠れますよ」
「お茶くれ」
……こやつ!!
よく初対面の人に向かってこんなに図々しくなれんなと思ったけど銀閣さんに会える機会もそうないだろうと思っていそいそと茶をいれにいく。
その間、白兵くんは常に私のそばに張り付いて離れない。
「花子殿、茶は拙者が」
「あ、ありがとう白兵くん」
ちゃぽちゃぽと音をたてながら急須にお湯を注ぐ白兵くんはどこかソワソワしている。
「どしたの白兵くん」
「いや、あの…その…」
そわそわそわそわ落ち着かない様子だ。もう、何でも言ってよと言うと、そうっと私に内緒話をするように顔を耳に近づけた。
−−ぼそ
「早く続きがしたいでござる」
どうしようこの子物凄く可愛い、さっきのお嬢さんとは比べものにならない程ときめいた。さっきからのそわそわの原因が早く続きがしたいからだなんて。
「−−可愛い」
「な、可愛いのは…花子殿でござろう」
「え!いや、いやいや…白兵くんのが」
「花子殿が可愛い」
「なぁ、一ついいか?」
良い事してる所悪いがよぉと顔を出した銀閣さんに驚き二人でばっ!と距離を取る。しかし、それどころではないみたいだ。
「ねぇ、体光ってんだけどこれって元の世界に帰れんのか?」
神々しく光るその姿にこくこくと頷けばすうっと消える銀閣さん。
「最短記録」
「早いご帰還でござったな」
それからソファーで二人でテレビを見ていたが私は気づいてしまった。いつも枕にしているあれがない。
「あいつクッション持って帰りやがったな」
しかしさっきから黙っている白兵くんがゆっくりと私の手を握るもんだからしおらしくソファに座り縮こまる。こんなに高校生みたいな恋愛をする羽目になるだなんて、ぎゅうと握られる手を見る。ああ、顔が熱い。
(花子殿…つづき)
(は、白兵くん!?)
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