■ その少し前、あちらの世界では。




我と居たのは一時の夢、良い夢だったな花子、貴方はここで幸せに生きるのだ。とは言ったものの、そう簡単には消えてはくれそうにないな。
そう自嘲気味に笑い里に戻れば懐かしいその景色に溜息が漏れる。あの世界に比べればなんと寂れた小さな村であろうか。

ぎゅっと握りしめた手に感触を感じ目の前で開く、花子から貰った物だ。
ああ、開けねばな…しかしそう早々と開ける気にはならなかった、その手に握りしめたまま歩き出せば所々から現れる我が真庭忍頭領等。

「久しいな、皆元気だったか」

そう我が口にすれば人鳥は泣き、他の者も口々に安堵の言葉をあげた。

「まぁ人鳥から訊いておって安心していたが、現実の話とは到底思えんな」

「でも帰って来てくれて良かったわん」

ああ。

それだけを彼等に返した。

「長い間留守を任せて悪いが、少し…休ませてくれ」

そうだ、我の居場所は元からここ。
この場所を守る為の長であり、鳳凰という名前を授かったのではないか。
任を果たす事が我の、使命だ。

住み慣れた自身の部屋には違和感を感じ溜息が漏れる。性に合わない事とはいえ、好いた女に一生の別れを自身から告げるなど…我とて辛いのだ。とは言っても何もする事はなく、袋に目をやった。

小さな袋の紐を解き中に指を入れる。カサリと音がし、感触からして直ぐに紙切れだと分かりそれを取り出し開く、それにはかつて共に暮らし好いた女の文字が書かれていた。

そして、袋の中身を全て床に出す。

「く…くくくっ、人鳥!そこにいるのだろう!刀の収集に向かっている頭領全てに召集をかけろ、今すぐに…だ」

ドタドタと向かえの廊下にきっと人鳥が天上裏から落ちたのだろう音がする。は!はいぃい!と慌てた声を上げ駆け出して行く。



「刀集めなど、ただ里を滅ぼすだけ…か」



(この宝石を売れば此れから何十年と栄える事となろう)
(こ、こんなの如何したんだよ!本物か!?)


(comment*☆.)


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