■ 君はこんなに。



君がね、君がこんなに僕を追い詰めるだなんて思いもしなかったんだよ。

それはある日の事でした。朝からテンションの高い蝶々さんは錆くんの手を引き外を案内してくれー!と出て行ってしまいました。うん心配だから蟷螂さんにお願いしたんだ。うちの白兵くんに変な事されたら困るし。

「え、君も行くかと思ってた」

「えー?僕がですかあ?行くわけないじゃないですか、めんどくさい」

「え?」

何て言った今こいつ。

あはは、まったく花子さんったら面白い事言いますねーと笑う長身の男はスタスタとリビングへ戻り静かに読書をし始めた。

「…………」

黒い…のか?しかしこの話題については触れてはいけない気がするんだ。直感的に…

「あ、花子さん確かこのテレビの中に昨日のあれ入ってますよね、一緒に観ましょうよ」

あれ、とは蜜蜂くんが気に入ってみているバラエティ番組なんだが昨日は蝶々さんが見たいものがあったらしくリモコンを独占されてしまった為、HDに録画しておいたヤツの事だ。

「あー、じゃあ観ますか」

その前に、とお茶を二つ湯のみに入れ運ぼうとしてお盆を上げれば目の前に壁。あれ?と見上げれば蜜蜂くんが持ちますねとお盆を持って行ってしまった。
うーん、さらりとタラシなのよね、あの子とリビングへ戻る後ろ姿を見ながら思う。



蜜蜂くんの笑う声を聞きながらボーッとテレビを見ている。…鳳凰さん、元気かな?なんて考えたり。忘れてた訳じゃないけど、まにわにが来た事で少しあの人の事を考えてしまっていた。

「考え事、ですか?」

「は?…あ、ああ。うん」

突然話しかけられたので驚いた。

「あ、あのさぁ蜜蜂くん。君らの頭領ってさ元気にしてた?」

「え!?え、えーあー…まぁ」

「何その曖昧な答え」

「そんな怖い顔しないでくださいよっ、体調的には元気ですよ」

「体調って…それ以外は元気じゃないって事?」

「いえ…それ以上は口止めされてますから」


ぶわあっと頭の中で鳳凰さんがフラッシュバックしてくる。怒った顔、拗ねた顔に優しく頭を撫ぜる手。ああ、まだ胸がキュウっとする。

「しかしどうしても聞かれる事があったらとこう言われました、花子さん」

え?っと顔を上げれば少し寂しそうに微笑む蜜蜂くんがいた。

「手を振払った事を我は後悔していない、と」

何の事かは分かりませんが大体想像はつきました。しかしあの方がそう言うということは花子さんには幸せになって欲しいという願いからなんじゃないですかね?
なんて言うとお茶をすすり、いつものようにでもでも本当回りくどくて分かりにくい言い方ですよねぇと悪態をついた。きっと彼なりに空気を和まそうとしてくれたのだろう。

「蜜蜂くん、ありがとう」


(だけど年下過ぎませんか?錆君。とりあえず蟷螂さんなんてどうですか知的で頼り甲斐がありますよ?)
(うーん…ありだね)
(ちょっっと待ったあああ!!!)
(おいおい、すまん錆殿が嫌な予感がすると言い出してな〜)
(花子殿の事となると噂に訊く錆白兵とは全くの別人だな)
(comment*☆.)


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