■ 二人のお家。


あの後、空気を察し湊はタクシーを呼んでさっさと帰ってしまった。

男三人居た時には狭く感じていたこの空間は今は広々と感じる。キッチンで水を飲みながらリビングを見渡す。鳳凰さんがよくやっていたゲームは片付けられて左右田さんが見ていた本棚はぴっちりと揃えられている。

息を吐き出せば横に申し訳なさそうに白兵君が立っていた。


「あの…花子殿、腕の痣の件本当に申し訳なかったでござる」


俯いた本当に申し訳なさそうな顔をする白兵さんの頭をポンポンと撫で大丈夫だよーとだけ言いその場を後にしてソファーでぼおっとテレビを見る。


「あ、そうだ夕ご飯なに食べたい?」


もう夕ご飯の時刻になる、忘れていたと白兵くんに問いかけるがいない。
どこにいるのかと思えばこの主夫、夕ご飯の支度をしていた。コトコトと既に汁物の沸騰する音が聞こえている。



「これくらいは拙者がするでござる」


さぁさぁと背中を押されソファーに座らされ白兵くんはキッチンに戻って行く。

心配、そりゃ心配させてるわな、家主がこんな調子じゃあ休まんないだろうし…私はよしっと頬を叩き立ち上がりご飯をよそい運ぶ、白兵くんだけ取り残されて、私がこんなに落ち込んでいたら白兵くんだって不安になる。むしろこの世界に一人だけになってしまって不安で居た堪れない思いに駆られているんじゃないか。

その頃、錆は鍋を温めつつ考えていた。何故、鳳凰殿はあんなに好きだった花子殿を諦められたのだろうか、あの様にきっぱりと。そうだ以前にこのような事を言っていた、"もし我らが居なくなったら花子は寂しいであろうなぁ…もし我らの想いが叶ったとて元の世界へ戻り一生会えぬものならば残酷なものだな"と。

ああ、そうか。
鳳凰殿は鳳凰殿なりに花子殿を思ってそうしたのだろう。伝えなかった訳が分かったでござる…がしかし、拙者はそれが正解だったとは思わぬ。


「花子殿、少し話があるでござる…」


悲しむ時に悲しみ泣き、そして新たな一歩を踏み出すならば本当の事を知るべきだと拙者は思うのでござる。



(拙者は貴方を支え続ける)

(鳳凰さん今なにしてんだろ…)

(comment*☆.)


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