■ おネエの翻訳力。
私の部屋の机の中から手紙が見つかった。それは達筆で読めなかったけれど、確かに最後の名前の部分は左右田右衛門左衛門と書いてある。これが最後に左右田さんが私に残したものなのかと思うと少し涙が出てきた。左右田さんはどちらかと言えば苦手な分類でよく邪魔もしてきて好きなのは顔だけだったのに。
あーあ、寂しんだわたし。
片手に手にした携帯をいじくりある人物に電話を掛ける。
「あ、もしもしわたし」
二人に家を任せ車で駐車場を出る。その人物は自宅の前で私を待って居てくれたみたいで手を振っているのが見えた。
車からおりれば驚愕の顔をされる。え?どうしたの?後ろに幽霊とか見えちゃってるとかそういう?と焦ればその男は首を横に振った。
「違うわよ、アンタその顔すっごくブサイクよ。目が腫れてるじゃない!」
あーもう!とわたしの手を引き彼は自宅へと招き入れては温めたタオルを目に当てなさいと渡してくれて更には暖かい飲み物をついでくれた。
そう、前に服を色々くださった人物だ。友人に泣きながらも全てを洗いざらい話した。なぜ神様は私の所に皆来させた後、前振りもなく返してしまうのか。なぜ私だけこんな悲しい思いをせねばならないのか。
「いやはや驚きよアンタ。でも本当にそんな事起こるなんてねー」
あ、今日わたしアンタの家に行くから車乗せなさいよねとコーヒーを啜る彼にこくり頷く。
「んー、これ見る限り寂しいのはアンタだけじゃないわよ」
そう言って手紙をペラペラ揺らす彼はそのまま内容を口に出した。
"このように文を書くのは久しぶりだ。姫様以外に書いたのも初めてだぞ、喜べ。"
なーにー?姫様って、しかも超俺様じゃないこの男と言う彼は総スルーしておこう。
"この文を書いたのは他でもない嫌な予感、否、姫様の元へ戻る事は良い事なのかもしれぬがそんな予感がしたからだ。きっとこんな私が居なくなったとしてもお前は泣くのだろうな、本当に馬鹿な女だ。しかしお礼を言いたい。私がお前の持つ本の中の人物だったからという理由であったとしても女のお前に何から何まで与えられ、なに不自由なく過ごせた事を。ありがとう、花子。最後に嫌われてしまったが私はお前に好意を抱いていたよ。心身共に姫様に捧げた身であるが故にそのような行為自体姫様に対しての信義を裏切る事になるから如何したいとかはない。だか、どうせ最後になるのだから伝えたかった。もう会う事もないだろうからな。では泣いているであろうお前に一言、酷く滑稽だぞ。その顔"
「では、また会う事があれば。だってさ、かいつまんで翻訳したけど良かったねー花子」
「うん、なんか涙止まったけどね。最後のとかまじ左右田さんが喋ってるように聞こえてイラってしたけどね」
暖かいコーヒーをすすり左右田さんの事を思う。今、どーしてるんだろう?"ひーめーさーまあああ!!この左右田、寂しゅうございやしたぁああうわあああん!!"とか言って姫様に足で顔をグリグリ踏まれて悦んでいるんだろうか、まじウケる。
「あんた、そういえばシタの?」
「は?シタって?」
「そりゃアレよ、アレ。」
彼はオッケーを片手でつくりそこに人差し指をズボズ…
「してる訳ないでしょーが」
「あら残念、面白い話聞けるかと思ったのに」
あんたが見せてくれたアニメのキャラクターが実物にいるって想像出来ないけどアソコついてんのかしらねぇ!なんてあっはあっは笑うその彼に目を細める。
「あのねぇ、アニメのままだったら幾らでも妄想で抱かれたいわよ。だけどね、性格も身体つきも何もかも人間…ていうか普通のイケメン集団な訳!やりたい放題って訳にはいけないのよ!分かる!?この気持ち!?」
本音をブチまけた私に真顔で首を振りやがる彼の首を締めたのはそれから三秒後。
(でも流石にもう慣れた、毎日そんなフェロモンむんむんな奴らに囲まれたらさ)
(慣れって怖いわね)
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