■ 怖い程、静かな夜。
なんだか夜、鈴虫の音が酷く耳について眠れなかった。
隣には人鳥くんももういなくて部屋が広く感じた。人鳥君がいなくなったのなんて結構前の事なのに何で今そんな事を思うのだろう、はぁ、馬鹿みたい。
とにかくなんか喉に水分が欲しくなって私は寝室を後にした。
リビングに行けば鳳凰さんも白兵くんも寝ているみたいで、左右田さんだけ布団に寝ている様子はない。何処に行ったんだろう。
「奴は帰ったみたいだぞ」
背を向けた鳳凰さんがいきなり声を出したので驚いた。
「ていうか今の本当ですか?」
そうだ、もしかしたら外へ行っているのかもしれないし左右田さんさんの事だから影で私達の様子をくすくす笑っているかもしれないじゃないか。鳳凰さんは布団から起き上がり此方を向く。
「本当、なの?」
そうか、本当なんだ。鳳凰さんはこういう嘘はつかない。そっかいなくなっちゃったんだと言えば懐から私が以前渡した袋を出す。
「我もいつかこの袋の中身を確認せねばならぬのか、花子」
「…そうかもね」
「寂しいか、奴が居なくなって」
そう、聞かれれば答えはYESだ。永遠という言葉は私たちには存在しないのだと理解していても別れはツラい。
「我が居なくなった時、お前は私の為に涙を流してくれるのか?」
「うーん、多分泣くと思う。付き合い長いしね」
「そうか…」
シビアな話かと思っていたら鳳凰さんはこれ、今開けてもいーい?なんて袋を片手に小首を傾げる。可愛い事してもダメだっつーの。
「えー」
「おっさんが言っても効果なし」
この人意外にこういうお茶目な所あるんだよなーと思っていれば普通にじゃあ良いと開けようとしていた為、急いで止めに入る。なんだこの人、約束したじゃないか!まったくもうと手でその袋の口を塞ぐと上から笑い声が振ってきた。
「くっくっく、錆が起きるぞ」
「鳳凰さんがそういう事するからです」
今考えればこの体制すこしヤバいんじゃないかと冷や汗が垂れる。鳳凰さんの膝の上にのし掛かって袋を守っているわたし。今、白兵くんが起きたら思わぬ誤解をうんでしまう。
「しー、鳳凰さんしーっ!」
そうジェスチャーで言えば耳元でこう囁かれた。
「い や だ」
ひぃやあああ、と鳥肌が立ち思わず声をあげれば鳳凰さんが困ったように笑っていて、パッと錆くんの布団を見てみれば黒いオーラなんてものは私には見えないけれど起き上がり俯いた彼からはそんなものが流れ出ている気がした。
んで、何で私はここで寝る羽目になっているのだろうか。
「錆、それは違うと思うぞ」
「うるさい、黙れ」
「白兵くんいい匂いする、おねえさん興奮して寝れないんだけど」
(寝ボケた錆くん怖い、怖い)
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