■ 最初のお願い。
「さあ今日は我の願いを叶えてもらおうか」
「……」
「まさか忘れた訳ではあるまいな」
うん、忘れていた。ばっちり忘れていたよ鳳凰さんよお。むしろアレから一週間もなんにも音沙汰ないんだから忘れるだろうが普通っ…なんてリモコンをびたん!と床に投げ捨てたい気分になった。
そう、だから本当はしてない思ったただけ。小心者だから。
「だだだってあれから一週間だしもう無効じゃ」
「期限は無かった筈だが」
何も言えねえ。あたしゃ何も言えねえよ。リビングでお茶をついでいる白兵をチラリ見れば直ぐに逸らされた。え、何でそらすのなんて思ったつかの間、早く着替えて来いとお達しがあったので何処かに行くのだろうと思う。
「…これとこれでいーかな」
手に取ったノースリーブのチュニック白のパンツを履く。それにカーディガンを羽織る。それに鳳凰さんの隣を休日歩くのもあってそれなりにしっかりとメイクを施した。仕事にしていくのはいつもブラウンのアイシャドウだけど今日はせっかくの休日だし季節らしい色を選んだ。
べ、別に鳳凰さんの為じゃないんだからねっ。
「なーんて、ないない」
最後にグロスを唇にやり部屋を後にする。
リビングに行けばいない。
かわりに茶を噴き出した白兵くんがいた。
「花子殿!?…き、綺麗でござる」
「あはは、お世辞はいいってば鳳凰さんはー?」
「………あ、ああ。それならもう外に」
そっかと軽く返事をして扉に手を掛けると反対の手を白兵くんの手が掴む。
「え、どしたの?」
「……いや、何でもないでござる。気をつけて、夕餉は拙者たちは済ませておくくので花子殿はゆっくり楽しんでくるでござるよ」
ハッとしたように直ぐに離された手。
それになんだか白兵くんが寂しそうに視線を俯かせたから私は手を伸ばす。
「ちょっ!花子殿っ、何して…」
「よーしよしよしよしっ!」
留守は頼みます。
そうニコリと微笑んで更に撫でればコクリと頷くのを確認して扉を出る。
あれ?なんだかワンちゃんみたいだななんて一瞬思って私はクスリと笑った。
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