■ まあ、いーか。
「と、言う事だ」
「つつ続きは?」
「それを話したら面白くないだろう。しかし酒の抜けたお前の性格の違いに驚いた。普通じゃないか」
くくくと喉で笑われる。もう死にたい、恥ずかしい、穴があったら入りたい。
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい…」
「何を謝る事がある。わたしは安心しているぞ、"ひとつ屋根の下"で暮らすのだからな」
あんなに変態では困るって…ぎゃあああ、もう恥ずかしさで死ぬ。やめてください、忘れて下さいと悲願してもニヤリと笑われるだけ。先を知りたいけど知りたくない。
「花子殿」
「はい…」
「改めて、宜しく頼む」
−−−バサリ
コンビニの袋が落ちる。
「花子殿…まさか花子殿は左右田殿を好いておられるのでござるか!?」
顔が赤い、顔が赤いと腕を掴まれ覗き込まれる。やめてくれ、これ以上醜態を見せたくない。
「ぎゃあああ白兵くんやめて、恥ずかしいからやめて!」
白兵くんを振り払い、トイレに引きこもった。花子殿!と言う声が結構長く聞こえてきていたが取り乱して申し訳なかったでござる…としゅんとした声が聞こえてからもうしない。
はああああ、禁酒しよ。
「花子、そろそろ出て来い」
嘘でしょ、何処から声が聞こえて…
え、天井が何故か開けられ赤いのが落ちて来た。あれ?トイレの天井って開けられたっけ?いや切れ込みも無かった筈だけど。
「屋根裏改造したな、このやろ」
「忍が住みやすくな」
だから最近よく居なかったのか、ようやくどこに行ってるのか分かったぞ。忍者怖い。
「………錆がぶつぶつ言っているのを聞いたが、左右田右衛門左衛門が好きなのか?」
「え!?好きって、好きと言うかなんて言うか好きか嫌いか言われたら…好き」
そうか、と一言。え、こんな狭いトイレの中で台の大人二人ですんごい窮屈なんですけど、機から見たらヤバイぞこの光景は早くトイレから出ませんかと肩を押せば腕を掴まれた。
「あいつのどこがいいのだ」
「は?」
「顔なぞろくに見えてもいないし性格など数日しか共にして居らぬというのに…」
「ほ、鳳凰さん?」
「っいや、早く戻るぞ腹が減った夕餉の準備をしろ」
がちゃり、開けられた扉を出れば新鮮な空気が肺に入ってくる。あ、天井元に戻しといて下さいねと告げて一人でリビングへ戻った。
これから騒がしくなるなあ。
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