■ 空気を読めぬ発言。
白兵くんが起きた。
きょろきょろ部屋を見回すが状況が理解出来ないようだ。うん、そうだろう。私達はリビングの机を囲んで椅子に座り鳳凰さんは見た事もない男を睨んでいるのだから。
あれ?見た事はあるのか、一度はとがめさんとこで働いてたんだもんな。
会う機会があってもおかしくない。
「花子殿、これは…っ」
頭を抑えた白兵くんは二日酔いのようだ。あんなにベロベロに酔ってたもんなあ、そりゃそうだ。私は立ち上がりコップに水を入れ白兵くんに手渡した。
頭にハテナを幾つも浮かべて昨日の事を思い出そうとしている姿が可愛い。
「白兵くん、こちら今日からこの家に住む事になった左右田右衛門左衛門さん」
白兵くんは宜しくと静かに頭を下げた。
「その風貌は錆 白兵殿か、宜しく頼む。」
「ああ、確か一度だけお会いした事があるでござるな……」
「そんなに畏まらなくていい。奇策士を裏切った事は私にはなんら関係の無い事だからな」
ほうほう、だいぶ掴めたぞ。
私が鳳凰さんの隣で諦観しているとハッと白兵くんが私の方を向く。
「拙者達だけで話し込み申し訳ない。花子殿は知らぬあちらの世界での話でござる…左右田殿あちらの話は花子殿の居ぬ時にお願いしたい」
「ほう……錆殿ほどの剣士がこの女に惚れているのか面白い」
惚れて?
まさかそんなはずある訳ないじゃん左右田さーん、あははと笑う。
しかし何も言葉を発さない白兵くんを不思議に思い見れば、顔を真っ赤にして口を魚のようにパクパクさせているではないか。
へ?何、え?どうゆう
「そ、左右田殿!!」
やっとの思いで声に出したのか上擦った声を出した白兵くんは私と目が合えば更に耳まで赤くした。
「これはすまない事をした」
悪気がない言葉を述べた左右田さんはお茶をすすり、鳳凰さんは眉間にシワを寄せ酷く機嫌が悪そうだ。
「花子殿…これは、その…少し拙者と外に!!」
うわわ。手を引かれ外に飛び出し階段を降りる。こんなシーンはいつぶりだ?もしかしなくともこれはそういう事なのだろう。私は揺れる白い髪を見てそう思った。
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