■ コンビニ。
「とりあえず雪見大福とはーげんだっつだな」
コンビニに行こうと言いだした鳳凰さん。お金を持たない彼が部屋をすぐに出るものだから私は慌てて追いかけて今に至るわけだ。
化粧もなにもしてないし、おまけにルームウェア。この歳で恥ずかしいったらない。
しかもファミリーマートじゃなくて今日はセブンイレブンの気分だとか言って少し遠出だし。それに…
「おー!山田じゃん、久しぶりだなあ!」
高校ん時の友達がここで働いている訳ですよ。
「あ、あー…ひ、久しぶり」
なんだなんだ久しぶりだなあ、今なにしてんだよと話し掛けるその男は、元カレな訳であまり会いたくなかった。
高校ん時に数ヶ月でフられて、成人式で凄いチャラくなって再開。とりあえずまた付き合ってよなんて抜かす馬鹿な野郎だった。
うわ、やばい。アイス売り場からこっち見てる。
「ん?」
ぎゃああああ、来た!!
「なんだその男は、知り合いか」
「ま、まぁ…」
カゴを見ればアイスだらけ、さっき二個だけじゃなかった?
「なに山田、もしかして彼氏?」
やっぱ、そうなるよね。鳳凰さんを見れば満更でもない顔をしてふふんと微笑んでいるではないか。
「我はなっても良いのだがな、これをくれ」
我?と不思議そうな顔をする元カレにずいっとカゴを渡し、お会計。
ありがとうございましたーという声の元、コンビニを後にする。コンビニで二千円もアイス買うとかどんだけだよ、この人。まぁ袋は、持ってくれてるし良いんだけどさ。私の前をスタスタ歩く彼、見えるのは大きな背中と揺れる髪。
「ねぇ、何で手繋いでるんですか」
「黙れ、お主が迷子になったら大変であろうが」
迷子って…少し遠くのコンビニったって近所だし。繋がれる右手がやけに熱い。
手を繋ぐ行為なんていつぶりだろう、そうしてればあの男ただの知り合いという訳ではないのであろう?と振り向かずに言い出す鳳凰さんに勘が鋭いですねと返す。
「お主が極端に分かりやすいだけだ」
手を引いたまま此方を見ない鳳凰さんは足を早める。苛々しているのが目に見えて分かる。
「ちょ、鳳凰さんっ足早いってば…ぶへっ!」
急に止まるから背中に追突してしまった、しかも変な声出た。もう、と鼻を繋がれていない方の手で抑えれば我では駄目なのかと言う声が聞こえた。
駄目なのか?
「な、何が?」
「聞いていなかった訳ではないだろう?我がコンビニで言った事を」
コンビニで、え?何だっけ…そう首を横に傾げれば遠くから花子殿〜!と言う聞き覚えがある声。そちらの方に顔を向ければ息を切らして走ってくる彼。
「ありゃま、どうしたの?」
「いやっあの、夜更けも近くなったので心配になり…それに」
ちらりと鳳凰を見る白兵くん。
そして白兵くんの声が聞こえ小さく見えた時に離された手。きっとはずかしかったんだな、なんだ鳳凰さんにも可愛いとこあるんだとニヤついていれば
何だと睨まれた。ああ、怖い。
「折角だしさ、皆で仲良く帰ろうか!」
そう私は二人の手を取って歩き出す。おいっと最初は焦っていた鳳凰さんも今は何も言わず歩いてくれている。腕を絡ませているから逃げられないよ、ね?白兵くんと反対を向けば真っ赤っか、ああ良いもの見られた。
家に帰れば人鳥くんのおかえりの声に癒される。さあ、皆でアイスを食べようか。
「」
[
prev /
next ]