■ 棚からぼた餅?
布団、ないわ。
あちゃー、そうだそうだ。鳳凰さんの布団しか無かった。しかしだ、鳳凰さんに布団を白兵くんに譲れと言うものなら首をしめられる。絶対。
どーしようかなあ、私が悩んでいると自身の枕だけ持ち歩いてくる鳳凰さんと目が合った。
「良いぞ。我の布団を堕剣士に貸してやっても」
「え?どっかで頭打ちました?」
いきなり優しい事を言い出したのだから吃驚するのは当然でしょう、だから虫ケラ、いやゴミ屑を見るような目で私を見ないで下さい。
「良いんですか?本当に?」
「幾度も同じことを言わせるな」
明日買いに行きますからと言えばいつでも良いと言う。どうした、一体。
私は先程からTVに夢中の二人に話し掛ける。
「白兵くん、今日は鳳凰さんの布団で寝てね。人鳥くんはいつも通り私んとこね」
鳳凰さんだって忍者だし、忍者って何処でも寝れるように訓練してんだよね確か、凄いなあ。
今日はきっとそこの床に…あっ、ソファーあんじゃん、私酔い潰れたらいつもソファーで寝てたし良い所残ってんじゃん。まぁ、今日だけは我慢して貰おうかな。
「かたじけないでござる」
深々と頭を下げる白兵くん、うん、やっぱりそのTシャツ似合ってるわあ。前に着ていた黒の侍の文字入りTシャツ。白兵くんの荷物の中に綺麗に畳まれて仕舞われていたのをみた時には感動したね、もう会えないと思っていたから。
「さて、みんな寝ましょうかね」
リビングに敷いてある布団に白兵くんは向かい、電気を落とした。おやすみーと残し二人を後にする。
そして、私は人鳥くんの手を引き自身の寝室に行きベットに潜り…潜り、え?
「人鳥くんは良いとして何で入ってくるの?」
「何を言う、我の寝床は堕剣士に開け渡したろうが。故に我はここで寝る」
ぎぃ、寝室のドアが開く。
「鳳凰殿、そういう理由ならば拙者が床で眠るでござる、布団で寝て下され」
おお、白兵くん。まじで男、助かった。最近本当に見境ないんだよ、このおじさん。静かに佇む白兵くんは廊下の電気の逆光を受けていつもより更に輝いて見えた。
「断る、お主は我の善意を素直に受けておれば良いのだ、早く寝床へ戻れ」
「それを断る、だっ男女がひひひひとつの寝床に入るなど破廉恥な…」
ちょっと、これ以上は人鳥くんが居るんだから…。
私はうるさい、と一言。
人鳥くんに掛け布団を掛けて私も寝る体制をとる。しかし鳳凰さんはベットに入ってくるし、白兵くんは断固としてそれを止めているし、まったく寝れない。
「どっちでも良いですから寝ましょうよ」
「ふむ、では…花子にどちらと寝たいのか聞こうではないか。それで異論はあるまい」
「せっ、拙者は別にっ、」
「この思春期真っ盛りの若造にするか、大人の落ち着きを見事に表した我か」
「え、白兵くんでしょ」
え?と二人で呆然と此方を見ている。
私そんな変なこと言った?横にいる人鳥くんを見れば焦った表情で首を横に振っている。
「花子さまっ、正直過ぎますっ、回答が早過ぎて鳳凰さまがっ」
鳳凰さんはドアを開け部屋を静かに出て行ってしまった。最後に白兵くんに向かい「必ず一晩隣で寝て過ごすのだぞ…」ととても低い声で告げて言った。何だったんだ今の。
「寝ないの白兵くん」
「せ、せせせ拙者はそういうつもりで止めに入ったのでは無くて、その…」
錆にとっては、鳳凰が花子と寝るのを阻止したかっただけであってこんな事になるだなんて思いもしなかった訳で。
「でも、あんなドスの聞いた声で言われて朝寝てなかったら何か言われるよ、絶対朝見にくるからあの人」
「…………………」
どどどどどうする、錆 白兵。
その時、錆白兵の心の中では天使と悪魔が戦争をおっ始めて居たのであった。
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