■ 扇風機よりクーラー。
最近、色んな物を新しく買ったりやら食費やらもろもろで貯金出来なくなってきた。それはまずい、いつかの為の結婚資金として貯めてんだから。そう、いつかのね。
「何を勝手に付けてんの」
トイレから帰ってきたらコレだ。
涼しい風があの壁に付いている機械から出ているようだ。
「どうだ、涼しいか」
「ふう、涼しい…じゃなくて、リモコンは?」
キョロキョロと辺りを見回すがどこにも無い。机の上は鳳凰さんの飲んでいるお茶のグラスだけだし、床にもない。
「知らぬ、言ったら止めるのだろう」
「止めないってばー」
「大根役者とはこの事だな」
くそ、棒読みだっただろうか笑顔で言ったつもりだったのだけれど。って事はこの人、隠しやがった。
「うちはですねぇ、クーラー禁止なんですよ、お金が掛かかりますから」
「くうらあ?この涼しい風が出てくるカラクリをそう呼ぶのか?」
便利な物が沢山あるなこの時代はと関心しているところ悪いのだが、そろそろリモコンを回収したい。
「ほら、扇風機回しましたからこっち来て下さい」
指突っ込まないで下さいねと注意して手招きする。興味を示したのか素直に此方に来る鳳凰さんは風に驚いていた。
「はい、リモコン!」
「嫌だ、この扇風機は風を作るだけであって涼しい風は来まい」
くっそー!何だこのオッサンは!!
「私ねぇ、これでも2-歳なんです!貯金しなきゃいけないの、主に結婚資金とか!」
「結婚?お主、嫁入りを控えていたのか」
酷く驚いた顔をしているがそんなに意外だったのか?いや、逆に傷つくんだけど。
「控えてるわよ。まだ未定けど後何年後かに運命的な出会いをするのよ!三十路になる前にね!」
「ぶふっ、」
うわ、噴き出しやがった。この人は結婚してないんでしょ、その歳で。絶対なんか難があるんだよ、むしろ里の女をとっかえひっかえとかさあ。
「くっくっく、花子、二十歳を越えたら直ぐだぞ三十路は」
「わ、分かってますよ…もう!良いからリモコン!」
私が手を出しても一向に出そうとしない鳳凰は扇風機の前に座った。
「金は我が出してやるから安心しろ」
はぁ?里の復興の為に刀を集めて売りさばこうとしてる集団の頭領が何を言うか。
「そこまで言うほど暑いなら今日だけですよ、ほんと今日だけなんですからね!」
もう、どんだけ暑いんだよとプンプンしながらキッチンに行き冷蔵庫を探る。
鳳凰の声が聞こえた。
「今日はてれびで見たはんばあぐと言う物が食べたい」
「はいはい」
丁度材料があって良かった、和風と洋風半分こで作ってあげようかな。って何ホクホクしてんだ私!恥ずかしい。
「花子、ありがとう」
「えー?冷蔵庫あさってて聞こえませんでした、なんか言いましたー?」
「いや、別に。我は腹が減った、早く作ってくれ」
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