夏だ!海だ!四聖だ!



「うん、海に行こう」


勿論、あんた達は強制ね!と可愛く言えば、冷めたブーイング。まだ高友乾の声はデカいものの他三人はこの人間界の暑さにバテて床に伏せている。


「こーいう暑い時こそ海!でしょ?とりあえずさ、次の休み合わせて皆で海ねー、決定。」

聞仲様には私から休暇届出しとくからあんたらちゃんと仕事終わらせなさいよねーと手を振り聞仲様がいる館に足を進める。

「げ、張圭。」

館に入れば当たり前だが張圭がでしゃばっていて私は目に見えて嫌な顔をしてやる。なんだよ、その顔はと言われたが今は聞仲様に休暇届を…あ、良い事思いついた!

私はあまり得意ではないスキップで張圭の横を通り過ぎた。

「な、なんだよアイツ…」




がちゃり、大きなドアを開ければ愛しの聞仲様のお姿。あー、格好良い。本当、俯いて書物を読んでいるお姿も、鞭を振っている時も完璧過ぎるのよね。

「何か用か、花子」

書物を見ながら私の名前を呼ぶ聞仲様の元へ駆け寄り、あのうと超えを掛ければちゃんと顔を上げてくれる。

「好きです、じゃなかった。休暇届をお願いしたいのですが」

「………何故、5枚もある」

私の告白をさらりとスルー。あ、そうですよね、分かっています。もう何百回もそうですから。しかし、私は一生聞仲様に着いて行くつもりです。

「私と四聖のものです」

「仕事は滞りなく済んでいるのか」

「私は勿論」

勿論、終わっていない。しかし私は反対の言葉を述べた、聞仲様の前では優秀な部下だもの。

「他の者もしっかりと終わらせるつもりです」

はきはきと告げれば、まぁ良いかと息を吐く聞仲様。やはり、お優しい。

「大好きです、間違えた。あの、ではお休みを頂いても宜しいのですか?」

「……好きにしろ」


私の告白にはいつも渋い顔をなされる。私は深々と感謝を述べ、仕事に戻ろうととびらを開くと"あまり張圭を虐めてくれるなよ"と言われた。え?何の事、仕事の報告書、書くのを回していた事?それとも鳥煙をちょくちょく足として借りる事?それとも…ああ、沢山あり過ぎて分からない。

「精進します」

あまり、余計な事は口に出さないようにそれだけ言って扉を閉めた。
張圭このやろ。でも休みとれたからいっかとまたスキップをすれば目の前にはその張圭の姿。とりあえずバックドロップを決めて、そのまま寝技に入る。

「いたたたたたた!なっ、何すんだよ!」

「チクった罰!そして、お願いがある。一生のお願い」

お願いがある奴がやる行動じゃねぇだろおおお!!と痛み悶える張圭。

「えへへ、もし休暇日までに仕事終わらなかったら引き継いでちょ」

「何度目だよ、一生のお願い」

多分、これで351回ですと言えば呆れた溜息が聞こえる。うう、やっぱなんでもない!と身体を退かす。

「昼食、今度昼食奢ってくれたら351生のお願い聞いてやるよ」





にやり、張圭、ありがとう。






さぁ!!海だ、海だよっ!!

仕事は滞りなく済んでいる。四聖は、あの山積みだった仕事をしっかり終わらせた。さすがだと思う。
私は、あれだ、少し張圭に手伝ってもらったが一応終わらせてある。本当だ。


「いやー、花子があの仕事を今日までに終わらせられたなんて奇跡だよな」

わははと腹を抱えて笑う李興覇に"う、うん、まぁね"と返す。

「しかし海に来たのは久しぶりだが、意外と良いものだな」

うん、良いでしょう?うんうんとその王魔の言葉に頷く楊森。あー本当良かったよ。筋肉美の二人を見やれば高友乾の拳が振ってくる。

「いてっ、何すん…」

「とりあえず変な妄想してそうだったから殴った、ほら念願の海じゃないか。入らないのか?」


ほらほらと手に持つ混元珠で水を魚の形に変えてピチャピチャと跳ねさせる。


「そうね、皆!よーし、水かけっこよ!」

わーいとバシャバシャ水の中に入って行く花子を王魔は片手で止める。

「着ている物を脱がんのか」

あー、そうだっけ。と上に着ていたパーカーのジップを下ろしばさっと砂の上に下ろす。
ばちゃばちゃと海に入って行けば誰も付いて来ている様子がない。

ん?と後ろを見ればまるで音が聴こえてきそうな程にカチンと固まった四人の姿に唖然とする。え?入らないの?

口を開けっぴろげの高友乾に手で口元を隠す王魔、丸いボールのような宝貝から海に落ちる李興覇、それといつも通りの楊森。
名に固まってんのと私はじゃぶじゃぶ海に入り一人で遊ぶ。

「水玉のビキニにポニーテールとか…ありゃ、反則だろ」

「意外と…その、いや、何でもない」

「言いたい事は分かるぜ王魔!こう花子ってなんつーかいつもは女らしさに欠けるけどさ、こう見ると……」

「可愛いな」

そう!そうだよ楊森と宝貝に乗り直す李興覇は花子〜!と大はしゃぎで海の上を飛んで行った。その後をじゃぶじゃぶと進む三人は良いな子供の特権と言う風に花子の元へ歩いた。

「もー遅いよっ、喰らえ!」

どこから取り出したのか威力が強そうな水鉄砲、いや大きさは最早子供サイズではないが。を取り出し水を発射させた。

「お、おい、やめろ」

「へへーん、止めないっ」

しつこくしつこく追い回す、特に集中して楊森だけを。

「まっ待て、意外と痛いぞそれ。しかも何故俺だけを執着的に狙うんだ」

「いや、こういう時しか楊森のそんな顔見れないしさ」

それに逃げてる楊森とか可愛いよ、もう楚々られる。うわぁっとか本当萌える、楊森の口からそんな言葉が出ちゃうなんてねと笑いながら言えば顔を真っ赤にさせ怒る楊森に背を向けにげる。

「自業自得だな」

高友乾は腕を組んで溜め息をつく、その顔面には先程の水。

「隙ありでござる」

「いってぇ!!てめー、花子!!」



きゃいきゃい追いかけ合ってる二人を、浮いている宝貝に乗る李興覇とそれに掴まりぷかぷか浮かぶ王魔が遠目で見ていた。

「揺れるなー、揺れる。海の醍醐味ってこの事だぜきっと」

「その見た目でそれを口にするな、しかし全く絶景だな」

「いや、お前こそ言っちゃ駄目だろ」



高友乾ー、楽しいね、楽しいねぇ!あ、あれなあに?うふふ。そう言って彼が後ろを振り向いた瞬間にそれは起こった。

「!?」

私は混元珠を手にしほくそ笑む。ははは、こんなに面白そうな宝貝放っておくわけがないじゃないか、ねぇ。

「お、お前、何するつもりだ?」

「水掛っこ」

皆、いくよー!と掛け声をかけて混元珠を頭の上にかざせば大津波。うはー高友乾の技とかスカッとするなあ、なんて思いながら彼等に浴びせる。

「ぎゃぁぁぁあ!!」

「これって俺ら殺されそうになってねえか?!」

「うむ、ヤバいなこれは。俺は今日宝貝を置いて来ているぞ」

「俺は手に付いているがこの場合役には立たんな、ここは素直に受け…」



どっばぁぁあーん!!!













そして、後日の話。



「うわー、みんな真っ黒だねえ」

あんなに真っ白かった四聖達が真っ黒になりなんだか笑える。日焼け止め付けないからそんな事になるんだよ、と笑ってやる。

「いてて、まぁ俺は直ぐに赤いのが引いて白くなるけどな」

うう、そうだった…高友乾羨ましい。
李興覇はそれを触っては声をあげる高友乾を見て楽しんでいるようだ。

とてとてとて、と廊下を歩いてくる張圭に手を振る。

「うわ、なんでお前らそんなに黒い……もしかして、皆で海行ってたんじゃ」



わ、さすが張圭ね!正解っと笑えばフルフルと拳を震わせる張圭に四聖が怯えている。

「何で、僕も誘ってくんなかったんだよー!!花子のアホー!!」

そう駆けて行く張圭にナニアレと呟くと後ろの四人がはぁっと息を吐き出した。


「ひでぇな、張圭さん泣いてたぞ」
「というか花子は気付いていないのか」
「鈍い!にぶちんだな花子は!聞仲様にはあんな積極的なのによ、あはは」
「あれには聞仲様も困っているがな」




「え…何か言った?」

「「「「いや、何でもない」」」」




りかさんリクエストで「四聖と海」を題材に書かさせて頂きました。
四聖は魔家四とは違って可愛らしいですねぇ、他の人たちとも絡ませられるし最高でした(^^;; 魔家四だったらもう間の2人しか仲良くしてくれなそう(笑)
こんな感じで、私はマイナーキャラクターが大好きでございます。モグラちゃんだって偉護くんだって、その他霊獣だって恋愛要素ですよ(^O^)いやはや、楽しいお題を頂けて幸せでした。

ここまで読んで頂きまして、ありがとうございました。

2013.08.02

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