何処までも天然道士。
「ねぇねぇ、ぶきっちゃん?」
なになにと子供のように笑う少年はあの有名な太公望の弟子だという。もっといい師匠がいるだろうに。こことかさ。
「ぶきっちゃんは私の事好き?」
「勿論です!」
でしょでしょと相槌を打ち、ならと話を続けてみる。太公望もスープーちゃんもいない、今がチャンスだ。
「ちゃんと、修行をつけて貰える所に移った方がいいんでない?」
だって、強くなれるよ?良い事ばっかだよ、私と一緒にいられるよ、むしろ私と住まない?と思った事を全て口に出してしまった。二言目で止めておこうとしたのだが、本当よ本当。
「え、でも」
やはり、うーんうーんと悩む武吉。
「何をしておる」
げっ…後ろを振り向けばスープーちゃんに乗った太公望が真顔で至近距離にいてびびってしまった。
「やめて、心臓に悪いから」
まったく、こいつってば本当何を考えているか見当も付かない。
スープーちゃんはすいませんとニヘニヘ笑っているし…まぁ可愛いから許すが。
「武吉、こやつ不埒な事を考えておるぞ」
「ちょっ、太公望!」
え?え?とハテナを浮かべるぶきっちゃんに馬鹿で良かったと安心した。流石、違う意味でも天然なんだから!もう可愛い!
「部屋に連れ込んで何をするのやら」
お前に教えるかカーバ!と舌べろを出すと彼に言った筈なのだが下にいる霊獣が反応してしまった。ち、違うの、スープーちゃんと涙を拭き太公望を睨む。
「ぶきっちゃんをスカウトしていただけよ、あんた弟子取らないんじゃなかったの!?」
「…………武吉」
「なんですか!?」
ああ、憎らしい太公望。ぶきっちゃんにこんな顔をさせるだなんて、ワクワクドキドキしちゃってるじゃないか。
「別にワシはこやつの所に行っても構わんよ。お前の好きにせい」
なんだその明らかに上から目線は、まぁ今は師匠なんだし上か。ていうか困っているじゃないかそれでも師匠なのか。
「ぶきっちゃん、やっぱりこんな奴の所辞めた方がいーって!私が…」
「ごめんなさい!!」
「え?」
ぶんっと音がする程頭を下げる武吉に呆気に取られる。太公望を見るとふふんと嘲笑っていた、くそ、くそぉ。
「僕はやっぱり師匠が好きですから!」
あ…ああ、そうだよね。
いつも追いかけてるし、好きだよね、ぶきっちゃんの好きな物は例え牛のフンであろうと好きになりたいんだけどさとブツブツ口にする明らかに傷付いた様子の私に、スープーちゃんがそこら辺に生えていた花をくれた。あ、涙でてきた。
「あ、師匠!」
行くぞスープーと太公望が飛んでいく、追いかけるんでしょまたと武吉を見ると此方を向いていて目が合ってしまった。
泣いているなんて恥ずかしい、私は目を急いで擦った。太公望め…
「僕が一人前になったら」
俯いていた顔をあげると真剣な顔の武吉の顔があり心臓が跳ね上がった。私はこの子のこういう顔に惚れたのだ。一途で曇りの無い心を持っているのだろうなといつも思わされる。
「一人前になったらこの足で、毎日花子さんに会いに来ます!」
「ぶぶぶぶきぶき…」
顔が噴火した、天然過ぎるよこの人。太公望がらいたら絶対弄られていただろう、顔に手を当てないでも分かる。既に腕も足も見るからに真っ赤だ。
「じゃあまた来ます!」
そう言って太公望を追いかけて行く武吉の走る様をずっとずっと眺めていた。ずっとずっと。
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「おや?花子じゃないか、こんな所で真っ赤になってどうしたんだい?」
「たたた太乙?」
「ん?」
「天然道士こわい」
封神の需要があったという喜びの勢いだけで書いた武吉夢。長く意味不明になってしまった、最後だけ登場した太乙さんご苦労様でした、失礼します∩^ω^∩
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[mokuji]
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