君の時間は私のもの。

「ねぇ、花子。帰らないの?」

私は崑崙から遊びにきて1週間はとどまっている。※怠惰スーツはジョカの夢を盗み見る為だけなのでこの話では存在しません。


「んー…もうちょっと。」

ここに居ると言っても何をするわけじゃない、ただ旧友との僅かな話を楽しんでお昼寝してグダグダ過ごすだけなのだ。
横を見ると、いつも眠そうな彼がいて目の前には緑の草原そして羊だ。

「なら花子も此処に住めばいいじゃない」

簡単に言う。崑崙に住むことは仙人にならない事に対しての私の条件なのだ、それにここに住むのは、色んな者との交流を密かに大切にしている私には一世一代の決断だ。
そういえば、と話を変えてみる。

「太上老君はさ、何故仙人になったの?」

何でそんな事を聞くの?と一度うーんと唸りを上げてから気怠げな目を此方に向ける。

「花子はならなくて良いよ。」

何故そんな事を言うのだ。そうだねで終われる訳がないじゃないか。最近に至っては生活に支障をきたす程言われているのだから。
アクビをするな!と頭をこづけば涙目でもう何なのと愚痴をこぼすが、私も真剣なのだ。

「何をそんなに悩む必要があるの?」

「何をってそりゃあ…」

仙人になったら弟子を取らなければいけない、会議にも強制参加、好きな事が出来ないなど、元始天尊等が聞いたら拳骨所では済まない話をつらつらと並べた。

「うん、それ私が断った時の理由と全く同じだね。」

そう言えば、こいつがなった理由を聞いた事が無かった。というか、聞いても教えてくれなかったのだが。
じゃあ何故?と問いただすと、私がなったのは私の為だから。などと言う意味が分からない。

「お馬鹿な君には分からないよ」

太上老君にしては珍しいふふふと静かな笑みを浮かべている。

「本当に分からない、何故?」

「じゃあ、月に一回は絶対に遊びにくる事。そしたら教えてあげる。」

そんな事で良いのか?私はコクンと頷く。そんなのお安い御用じゃないか、太上老君と会うのをどんなに楽しみにしているか。こうやってのんびりする時間がとても心地良いのだ。

「私は花子よりも早く声を掛けられ仙人になったよね?覚えている?」

覚えている。それから私もなれと言われたが駄々を捏ねたらあっさり引き下がってくれたのだ。
崑崙山近辺に住む事を前提に承諾されたのだが。

「そう、元始天尊は私にこう言ったんだよ。」




花子に弟子が出来たら如何なると思う?面倒見が良い奴の事じゃ、お主の事など忘れて弟子に手一杯になるであろうのぉ。

まぁ、高齢仙人お主等の内どちらかがなってくれればどちらかが断った場合何も言わんがの。


「卑怯だよね、あの時は私もあの糞じじいと思ったよ。」

「だから太上老君がなったの?」

「だって花子は嫌がると思ったし、それに…」



それに?と私が尋ねるとコテンと首を傾けもう眠さが限界なのか瞼が下がり気味だ。最後まで起きていてくれよ。内心いつ居眠りに入ってしまうのかドキドキしていた。


それに、花子が私に会いに来てくれなくなるのは嫌だから。

ぶおっと顔が熱くなる。
何なんだこの男は、心臓がおかしくなるじゃないか。

「後もう一つ理由があるんだ」

君が他の人に世話をやいているなんて、妬けるじゃない。

もう、寝ていい?だから、花子はずっと断っててね。おやすみ。と直ぐに目を閉じ寝てしまった。


ざぁ、と風が吹く暖かくてなんて心地がいいんだろう。

さり気なく握られた暖かい手と、女とも見まごう横に寝る男を見て笑う。さて、私ももう一眠りしようかな。


___________

君に会いたい、ただそれだけの為に。



後から聞いた事によると。
「私が弟子をとったって君と違って放任主義だから」
特に何ら変わらないとそう言うことか。

確かにあの弟子を見てれば頷ける話だった。


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