小さな椛はいつしか。
え、私が出向かないと行けないの?
まぁ、しょうがないか。土産にこの元始天尊からもらった桃マンでも持っていくとしよう。
会うのは久しぶりだなぁ、秘境もなかなかの良い所だから行くのが楽しみだよ。
ふふふと家の扉を閉める時に口元が緩んでしまう。さぁ、懐かしい友の所へ。
「楊ゼンと私の可愛い哮天犬、今日は頼んだよ。」
太上老君の所に行くとしても手段を持たない私は移動手段として、哮天犬を持つ楊ゼンに送り迎えを頼んでいた。家から出てきた時にはもう待機してくれていたようだ。
「貴方の為ならいつ何処へでも。」
「老人に冗談はよしてくれ。」
楊ゼンのいつもの冗談に哮天犬を撫でながら苦笑いする。おお、顔が近い近い。心臓に悪いじゃないか。
「いつも言っているじゃないですか、僕は美しい物が好きなのだと。」
「心臓に悪いからやめなさい…」
「見た目も僕と変わらない。」
「楊ゼン…」
やめてくれ、あまりこういったことは得意じゃない。恥ずかしいにも程がある、何故こうも女と男とでは体格が違うのだろうか。見下ろされ両手と壁のあいだに挟まれてはにげれないじゃないか。顔が熱い…
「すいません、つい意地悪をしたくなりました。貴方の反応が可愛いもので。」
顔を横に背けていたがやっと離してくれるのかとホッと前を向くと青紫の髪が目に掛かり唇に柔らかい物が押し当てられる。
ああ、こいつ。
「………」
私が何も言葉を発しないと顔色を伺うように覗きこんでくる。怒っている、怒っているぞ。
「後、100万回だ…」
え?と驚き顔を赤らめる楊ゼンを不思議に思い、先ほど言った言葉を思い返す。あ、言い方を間違えた。
「後、100万回。私の足になったら許してやる!!」
すると壁から手は離され日の光が私の目に当たる。楊ゼンの姿が逆光で何故だか悲しげに映る。すまん…分からないんだ、小さい頃から君を見ていた私にはどう対応したら良いのか。
「困りました、それでも僕は貴方が大好きです。」
眉尻を下げ微笑みながら差し出される手を握る。
ああ、私も好きだよ。
小さい頃よく泣いていた君とよくこうして手を繋いで玉鼎の元に送り届けたものだなぁ。
あの頃とは違う大きな掌に心臓が忙しない。
ああ、太上老君。
私も人と同じ恋と言うものを味わってもいいのだろうか。
許されるなら
いつまでも君と。
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"知っていますか?
花子はすぐ顔も耳も赤くなります、実に人間らしいです。"
そして、そこも可愛…
"それ以上口を開けたらこの桃マンが火を吹くぞ"
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[mokuji]
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