飛び出した瞬間に私はばたりと床に倒れ込む。
「馬鹿か私は!!」と叫びたくなった。
それに気づいたオノやカマを持った村人達の視線がバッと私に集る。
チェーンソーを持った男も私に視線を向け、ギュウンとチェーンソーのエンジンをかけ直した。
ヤバイ。これは、非常にヤバイ。

ジリジリと近づいて来る。
いや、でもこれでレオンさんが逃げるスキが出来たんなら良いじゃないか。
多分私はここで死んでも問題はないし…
と考えていると、パンッ!と発砲音がした。
どうやらレオンさんが撃ったらしい。

「おい、コッチの相手が終わってないぞ」
「レオンさん、な…」

「何で逃げなかった?」そう聞こうとした瞬間、ガナード達は何もできそうにない私より、戦えるレオンさんを先に殺す事にしたらしく、私から離れ一斉にレオンさんに襲いかかった。


「レオンさん!!!!!」


ああ、私は何て頼りない、助けたいのに、助けられない。
いや、そんな事があってたまるか、助けたい。

そう思い、床を思いきり蹴り出した。
その瞬間、私の頭の中に声がする。
『助けたいか?』
そう問われ、「当たりまえ」と答える。

そこから後はよくわからない。
ただ、気づけば抜けなかったはずの刀を持って、ガナード達の死体の中に突っ立っていた。
返り血の飛んだ制服と自分の手を見て、私がやったのかとハッとする。

「私、どうやって…」

すごく運動音痴と言うわけではないけど、逆にすごく運動ができるわけでもない。
というかまず刀の使い方なんて知らないし。
そんな私が一体どうやって…?


「バンカイした?」


なんてまたアホなことを呟いたと同時にゴーンゴーンと鐘の音が響き渡る。
きっとエイダだ。エイダが鳴らしたんだろう。
鐘の音が響き渡る中「やっぱここ、バイオ4の世界なんだ」と理解する。


家の外にいたガナード達は、ぞろぞろと吸い込まれるようにようにきっと教会への隠し道があるだろう家に入って行った。


「どうやら助かったみたいですね!レオンさ…、ど、どうかしましたか!?」

ほっとして、ふとレオンさんのほうを見れば、彼はポカンとした顔をしていた。
私が話しかけていたのに気づくと「あ、いや…」と言いながらレオンさんは砂を払って立ち上がる。
それから「あー…」と唸って呟いた。

「助けてくれてありがとう。しかし、君は何物だ?」
「え?」
「あー、何故あんな所にいたのか、それから何故俺の名前を知っていたのか教えて貰いたいのだが…」
「え?名前…?」
「ああ」

そういえば、いろいろパニクりすぎて教えても貰っていない名前を呼んでしまった気がする。なんてこった本当に馬鹿だ私は。
でも本当にこの人はレオンさんだったのか…


「れ、レオンサンダナンテ呼ンデナイデスヨ、ゼンゼン!」
「君、嘘つくのが下手だって言われないか?」

へったくそな嘘をつくが、すぐにばれて、レオンさんにぐりぐり痛いほど墓穴を掘られ、冷や汗が流れてくる。


「あ、あの、なんか『助けたい!』って思った瞬間レオンって名前が頭に出てきて、つい叫んじゃったんです!ほんと!これほんと!!!」
「本当か?」
「ほんとです!ほんと!あああ、これ、きっと運命ってやつなんですよ!そう!運命!」

「運命って、キツいな自分」と自分にツッコミを入れる。
しかし、レオンさんは「そうか、運命か」なんて真顔で頷いている。おいエージェントよ、そんなんで大丈夫か?



「じゃあ、あらためて、俺はレオン・S・ケネディ。アメリカでエージェントをしている。今回は大統領の娘が誘拐された事件でここまで来た。君は?」
「あ、私はみょうじなまえです」
「なまえか、何故あんな所にいたんだ?」
「え?あー、」

どうしよう、仏壇のお菓子くすねてる時に刀触ったらいつの間にかここにいて、しかもガナードに襲われたから逃げてあんなとこに潜り込みましたーキャハ★
なーんて言ったら精神科連れていかれるだろうなぁ…
それは頂けないな。

「な、なーんか、歩いてたら頭殴られて気づけばこんなとこにいましたー」

とレオンさん限りなく顔に近いところらへんを見ながら言ってみる(目なんか見たら嘘ついてるのバレちゃうからね!)。


「そうか、すぐに救助ヘリが来る。それまで頑張ってくれ」
「うん」

まぁ、そうもいかないだろうけど…
と思っていると、レオンさんが「これもアシュリーの誘拐と関係が有るのかもしれん」と呟いた。

ごめんなさい、まったく関係ないんですよねこれが。