あの変態自称カリスマ野郎に刺されたとこからはすごい量の血が出た。
これはやばいと思ったけど、急に襲ってきた睡魔に誘われ「大丈夫ですよー」なんて言って目をつむった。

すると、世界が急に暗転して、そうかと思うと私は綺麗な野原に立っていた。
カラフルな花が咲き乱れ、美味しそうなフルーツがたくさん実った木も立っている。そばにはさらさらと音を立てて流れている澄んだ川。
なんだかむしょうに幸せだ!と叫びたくなる。

そうだ、川の向こうには何があるんだろう。きっと、こっちよりももっと綺麗で素敵なんだろう!と靴が濡れるなんて事も考えず、向こうへ行こうと川に踏み入った。
進んで行くと案外深い。半分も行ってないのにもう腰のあたり。でもいいや、あっちに行けたら。

ざぶざぶと水をかき分け進んでいると、「なまえ!」と名前をよばれた気がした。

「レオンさん?」

でも、振り向いてもだれも居ない。
気のせいか、と再度進もうとしたけど、やっぱり私を呼ぶレオンさんの声がして、「そうだ、こんな所に居ないで帰らないと」ともと来た道を戻った。

道を進んだ。進めば進むほど細くなる道と暗くなる周り。
さっきの野原とは大違いだ。
戻りたいな、とも思ったけど、それでも皆が待ってるから、と道を進んだ。

* * *

真っ暗な中を進む。
ただひたすらに。
どれだけ歩いたのか分からない。
もう何日も歩いてる気もするし、10分もたってない気もする。

目の前に小さな点が見えた。
何だろうと目を凝らせば、それは光だった。
どうやら出口らしい。
私は光にむかって走った。



「……っー」


重い瞼を開ける。
なんだ、さっきのは夢だったのか。
ぼやけた視界に綺麗な金髪が映った。
どうやら今私はレオンさんの膝の上に頭をおいて寝ている状態のようだ。
これは、膝枕…

「レオンさん…?」
「なまえ…」
「死ななかったですよ」

とりあえずにへらーと笑って無事を示すが、レオンさんはいきなりボロボロと泣き出した。

「はっ?」
「ほんまに、ほんまに、よかったぁ!」
「えっ、ちょ、なんか変じゃないですか?」

抱き起こされてぎゅううう!と抱きしめられる。
激しい締め付けと、レオンさんのキャラの崩壊にあわわわと戸惑っていると「おいさっさと用件をすませろよ」と言う声と共にべりっとレオンさんが離される。


「る…る…」
「なまえ、悪いな俺の…」
「るいすしゃあああぁあぁあぁん!」
「え、ちょ、なまえ!?」

本当はあの場で死んでしまうはずだったルイスさんがピンピンして生きている事を確認した瞬間、目からとめどなく涙が溢れ出した。

「るいっ、るいるいいぃいいるいしゅしゃあああぁあ!!よかっ、う、よかっ、ふあぁああ〜!」
「ああ、ありがとうなまえ。ほら、泣き止んでくれよ…」
「うえっ、うえぇえじゅ、十分ほどっ、無理ですぅうう!!」
「なまえちゃああぁあん!生きててほんまに良かったぁああ!」
「あ、おいなんでまたお前まで泣くんだよ!」
「やってさぁ〜やってさぁ〜うぉぉおお!」
「ふぁあええ!なんっ、なん、なんでレオンさんこんなっ、うあぁああん」
「なまえちゃぁん!なまえちゃぁあん!!びぇええ!」
「ああ!もう2人とも泣きやんでくれよっ!!」