握っていたなまえの手から力が抜けてずるりと血だまりに落ちる。
腹部の傷を押さえて止血しようとしても、意味はなく、延々と鮮血が溢れるばかりだ。

「くそっ…!止まれ!!止まれ!!」
「レオン…」

ルイスがどうしようもない、という様に俺の名前を呼ぶが、それを無視して名前の傷口を押さえる。しかし、自分の手が真っ赤に染まる反面、なまえの顔はどんどん白く、というよりも青くなって行く。

こんなところでお別れだなんて、まだ何も出来てないじゃないか。俺の気持ちも伝えてないじゃないか。

動かないなまえの身体をぎゅっと抱きしめる。なまえを助けられない自分の不甲斐無さに腹が立つ。

「なまえ…っ」
「……ったぃ…」

小さな声がして弱々しく自分の胸板を押される。びっくりしてなまえの顔をまじまじ見ていると「いたいねん、アホ」と言われた。


「なまえ…!?」
「ちょ、お前どけ…じゃま」
「!?」

起き上がったなまえにグイッと先ほどとは違う力で追い払われる。
そして、なまえは自分の手で腹部の傷を押さえたかと思うと、小さな悲鳴をあげて、また倒れこんだ。

「なまえ…っ!!!」
「もー、いややわぁほんま…」
「なまえ、なのか?」
「うん、そうそう、久しぶりやな兄ちゃん」

「ほんま、嫌な再開やわ」といつもと違う口調のなまえに、あの時小屋で会った"なまえの守護霊"とか言っていたやつを思い出した。

「お前はあの時の…」
「あ、思い出してくれた?」
「あぁ、それよりなまえの傷が…!」
「あぁ、それ。さっき閉じた」
「なっ」

そう言ってペラっと血まみれの制服を捲り上げるなまえ(と言っていいのか分からないが)、そこにはさっきまであった大きな傷は少し歪だが癒着していて、おびただしい量の血はもう出ていなかった。
「いったいどうやって」と聞けば、なまえはニヤリと笑って、「チートっちゅーやつや」と言った。