どきどきしながら、アシュリーが囚われている部屋、それから、ルイスさんが悲惨なことになってしまう部屋に足を踏み入れた。
ゲームならレオンさんが入ってすぐにルイスさんが来るのだが、私がいるこの世界ではどうなるのかいまいちわからない。

どうしようとぐるぐるしていると、「助けて!」というアシュリーの声が聞こえた。

「アシュリー!?」
「っ…」

レオンさんはアシュリーを助けるため、小さな舞台のようなところに立ち、ライフルを構える。
まさかアシュリーの救出が先に来るとは思わなかった私は、レオンさんのそばにいるか、ルイスさんが来るドアを見はるか、どちらを取るかそのあいだでうろうろする。

そのあいだにもひっきりなしに銃声や、何かが倒れる音、アシュリーの悲鳴が部屋にこだましていた。

正直、私の頭は今まで生きてきた中で一番働いていた。
レオンさんのそばにいるべきか、ドアをとるか…
いや、正直私がレオンさんのそばにいたところで、役には立たないし、突っ立てるだけだし、普通に考えたらルイスさんが来るのを待つ?
でも、もし、何かが変わっていたら?何がとかよくわからないけど…。
でも…そんな……

ぐるぐると考えている中、アシュリーの「鍵を拾ったわ!」という声が聞こえた。
その声にはっとする。
なんだ、普通に進んだじゃないか。
じゃあルイスさんは?

「れ、レオンさん、私、ちょっと気になることが…」

だから、ちょっと戻りたいです。と言おうとしたと同時に、ガチャリとドアの開く音がした。

「見つけたぞ…」


あぁ、またなんで油断したときに限って!
ありったけの体力を使って、ルイスさんのもとに走る。
それから、そのままルイスさんを突き飛ばした。

カラン、と何かが落ちる音と、どすっという鈍い音が同時に聞こえた。


「っ……は…」


ばたばたと音を立てて赤いものが足元に落ちる。
それに合わせてじわりと鈍い痛みが腹部に広がった。

「よかった、おくれたかと、おもった……」
「なまえ…?」

床にしりもちをついているルイスさんがびっくりしたように私を見る。
後ろから自称カリスマヤローの「ふんっ」という声がしてずるりと触手が腹部から抜ける(なんだ、もっと投げ飛ばされるかと思ったけど)。そして自称カリスマヤローは、私がルイスさんを突き飛ばしたときに落としたサンプルを拾い上げて、もう一度「ふんっ」と言った。

がくんと膝から力が抜けて床に倒れこむ。
手で押さえたところからどくどくと血があふれ出して床が真っ赤に染まってゆく。
「なまえッ!!」とレオンさんがあわてたように駆け寄ってきた。


「サンプルさえ手に入れば用はない」
「サドラーッ!!」
「お前たちの処分はサラザールに任せてある。まぁ、その小娘はもう助からんだろうが」
「ッ…!!」

勝ち誇ったような笑みを残して、部屋から出ていく自称…もうめんどくさい。

「なまえ!!」
「レオンさ…」
「なまえ!」
「ルイスさんは…?」
「大丈夫だ、大丈夫だが、どうして…」
「私、どうしても…っ」

喋ろうとすると、のどのほうから生暖かいものが上がってきて、むせてしまう。
頭がぼぉっとしてきた。

「おか、しいな…ッげほ、ほんとは、もっとか、かっこよく…」
「喋るな!!」
「だめだな、私……ほんと」
「なまえ!!」
「あー……ねむい…」
「ダメだ、なまえ!しっかりしろ!!」
「すみま、せん…ちょっと、やすみますね…ごほっ、だいじょぶです…すぐ…」
「なまえっっ!!!!」


やだなー、レオンさん、そんなに怖い顔しなくたっていいじゃないですか。
ちょっと、疲れたんで休むだけですよ。
大丈夫、しばらくイベントはないですよ。