ゆるゆると目を開ける。
真っ先に入ってきたのは白い天井だった。
この天井には見覚えがある。寝不足で死にそうな時、風邪だと偽って何回かお世話になった。学校の保健室の天井だ。
むくり、と起き上がり、周りを見渡せば、やっぱりそこは保健室で、私はベッドの上に座って居た。
保健室の先生がそばにやって来て「大丈夫?」と私に聞く

「あなた、階段から落ちて、気絶したの。覚えてる?」
「え、ああ、はい」
「その時、足を挫いたみたい。他に痛いとこある?」

そう言われて足を見れば、自分の右足首には包帯が巻いてあった。
それを見て、なーんだ、さっきまでのあの変な男達に襲われたり、よくわからない男に助けられた体験は気絶してた時に見た夢だったんだ。と自分の中で納得する。

「はい、大丈夫です」

そう言って顔を上げるとそこに先生は居なかった。変わりに夢の中の人だったはずの人が居る。

「ぜん、ぽうじさん…?」
「そうだよ。それがどうかした?」

にこにこと優しそうな笑顔で私にそう問いかけるが、どうしたもこうしたも、なんであなたがここに居るんだ!

「あなたは夢の中の…」

「夢の中の人じゃなかったんですか!」と言おうとした瞬間、視界が真っ暗になり「夢ではない」と耳元から声がした。


「えっ?」
「これは夢ではない」

この声は、たしか

「潮江、さん…?」
「夢ではない。これは……


パチリ
目が覚める。真っ先に入ってきたのは知らない木造の天井だった。
むくりと起き上がり周りを見渡すが、やっぱり学校の保健室ではない。
少し離れた所で、こちらに背を向けて作業する人、恐らく善法寺さんがいた。

頭の中であの潮江さんの声がリフレインする。

『夢ではない。これは……』



「これは、現実<うつつ>……」