着物がないから町に会に行くのだけどその前に町に行くための着物がないと気づいた私。
どうしよう。

「このままのカッコは……」
「だめだと言ってるだろうがバカタレ」
「さっきからバカタレバカタレってほんとひどいよ文次郎君や…」
「仕方ないな…来い」

と言われて文次郎君のあとをついて行けば、文次郎君と仙蔵君の部屋の前まで来た。そしてそのまま中に入って行く文次郎君に続き、私もお邪魔する。文次郎君はごそごそとタンスを探りだし、私は「なにしてるんだろ?」と黙ってその様子を眺める。ふとタンスを探る文次郎君の手が止まり、そして「これでいいだろ」と何かを差し出されたので受け取った。何かと思えばそれは男物の着物だった。

「これ」
「俺の着物だ。少々でかいだろうがこれしかないしな。まあ着れんことはないだろう。今日一日かしてやる」
「ありがとう」

とお礼を言えば、文次郎君はうん、とうなづいて「じゃあ俺はもう少し授業があるから、終わったらまた迎えにいく」と言って踵を返した。私はその背中に「行ってらっしゃい、頑張ってきてね」と声をかける。すると文次郎はこちらを振り向かずに手をあげてひらひらと振った。
さて、私も文次郎君の部屋で着替えるのは流石にあれなので、一つ隣の自分の部屋へ移動する。
そしてとりあえず着物と袴をバッサと広げてみた

「ふむ、わからん!」

着方が分からん!!
文次郎君に聞いた方が良かったかな?いや、でも何でも頼るの、いくない。やっぱり自分でやってみるのが大切だ!と思う私は!!
そんなこんなで格闘すること数十分。

「できたっ」

なんだか少々いびつな気もするが、まあ何とかなっている。
ふっふふ、やればできる子なのよ、私も!
「さ、私も仕事に戻ろう」とふんふふーんと鼻歌を歌って事務所に戻ったら、小松田さんに「なんかおかしいよ?」と言われて着付け直してもらったのは内緒の話だ。