「…ふあ」

パッチリと目が覚める。
どうやら朝のようだ。
もそもそと布団から這い出して、部屋の戸を開けて廊下へでる。
あれだけ昼寝してて、案外寝れるものなんだなー
なんて思いながら、朝の冷たい空気を思いきり吸い込んで伸びをした。

「さぁ、今日からどうしよう」

足もだいぶん治ってきたし、そろそろ事務の仕事をさせてもらおうかな。
まぁ、今の私は寝起きで頭も顔もぐちゃぐちゃだし、とりあえず、まずはコレをどうにかしに行こう。それからでもたぶん遅くはないと思う。
たしか、向こうに井戸があったはずだ。

私は部屋から手ぬぐいを持って、井戸へと向かう。少し歩けば、すぐに井戸が見えてきた。それから先客がいるようで、ボサボサした長い髪の毛の男の子がいるのも見えた。
「たしかあれは…」と名前を思い出そうとした瞬間、男の子とパッと目があった。そして男の子が「おー!」と声をあげる。

「なまえじゃないかー!」
「小平太君!」

近づいて「おはよう」と挨拶をすれば元気に「おはよう!」と返してくれた。

「もう歩いて大丈夫なのか?」
「うん!もうほとんど治ったんだ!」
「そうか、それは良かった!しかし、ここの井戸に来なくても、保健室の近くにあっただろう?」
「あ、私昨日から文次郎君と仙蔵君の部屋の隣に移ったんだー!」
「そうなのか!私の部屋もすぐ近くだぞ!」
「そうなんだ」
「またなまえの部屋に遊びに行ってもいいか?」
「うん!いつでも来てよ」

そんな話をしながら私は井戸から水を汲んで顔をあらう。水が冷たくて、私が震えていると、小平太君は「がはは!」と笑った。

「そうだ、このあと長次と飯を食いに行くんだが、なまえも一緒に行かないか?」

小平太君が自分のもさもさした髪の毛を、器用に紐で結っているのを「すごいなぁ」とぼーっと見つめていると、小平太君がそんな事を言った。
「え、いいの?」と聞き返すと、大きく「おう!」とうなづく。

「なまえともっと仲良くなりたいからな!」

にかっ!と笑う小平太君に私もにかりと笑って返事をする。
「よし、じゃああとで迎えにいくな!」と小平太君と約束をして別れた。私もさっさと顔を洗って部屋へ戻って、いつの間にか綺麗に洗われていた制服に袖を通して、わくわくした気分で座って小平太君を待つ。すると、程なくして、ドドドドという足音がしてパーン!と障子が開いた。

「なまえ!開けていいか!?」
「もう開けちゃってるよ!!」
「ああ、すまない!まあいい!飯を食いに行こう!」

「なはは!」と笑う小平太君に「うん!」と返事をし、それからさっきからずっと無言で小平太君の後ろにいる長次君に「おはよう」と挨拶をする。すると彼はムッと顔をしかめて、もそっと何か言った。
あれ、私何か悪い事をしただろうか。もしかして一緒に朝ごはんを食べに行くのは迷惑だっただろうか。
そう思っていると、小平太君が「何だ、えらく嬉しそうじゃないか!」と長次君の肩をバシバシ叩いた。どゆこと?

「え?」
「ん?ああ!長次はな、こー、ムスっとしてる時は機嫌が良いんだ。逆に笑ってる時はヤバイ」
「そ、そうなんだ」
「………もそっ」
「え?なに?」

長次君が何か言ったけど、あまりにも小さくて聞こえづらいから、すっと彼の口元に耳を寄せた。

「……、おはよう」
「あ!うん!おはよう!!」

やっと聞き取れた長次君の言葉に嬉しくなって、もう一度「おはよう!」と言えば、彼はまたムッとした。
これ、本当に機嫌いいの…?


朝の食堂は、色とりどりの忍装束を着た生徒たちでとても賑わっていた。前に文次郎君ときた時は、お昼も終わりの頃だったから人の数が少なかったけれど、こうしてみれば、本当に沢山の生徒がいるんだなあと思う。

「なまえ、どうかしたのか?」
「ううん、やっぱり学校なんだなと思って」
「ふーん、そうか。なまえは学校は始めてか?」
「んー、忍者の学校は始めてだけど」
「忍者の学校は?」
「あ、え、えーと、」

ぽろっとついうっかり言ってしまった言葉に小平太君が興味ありげに噛み付く。しかし、「私の学校はどこどこにあって〜なになにが特徴で〜」なんて言えるわけがない。
どうにか話をそらそうと「うーん」と唸っていれば、頭上から「小平太長次それになまえ」と言う声が聞こえた。
上を向けばそこには朝食の乗ったトレーを手に朝からとっても綺麗なサラサラヘアーを惜しげも無くなびかせる仙蔵君と、今日も凄い隈の文次郎君がいた。

「おお、仙蔵君と文次郎君おはよう」

と挨拶すれば、仙蔵君は「ああ、おはよう」と、文次郎君も「おはよう」と返してくれる。それから仙蔵君が隣に座ってもいいか?」と聞いてきたので、私は笑顔で「いいよ」と言った。

「そう言えば怪我はもう治ったらしいな」
「うん、おかげさまで!まだ走っちゃダメだとは言われてるけど」
「そうか」

よーし良いぞ仙蔵君。そのまま話しをそらして…

「で、さっきは何の話しをしていたんだ?」
「おっはーそうきたかー!」
「ああ、それはな!それは…なんだっけ?」
「……もそ…」
「ああ、そうそう、なまえの学校の話しだ!」

小平太君が元気にそういえば、「みょうじの学校?」と文次郎君が反応する。
あー、もうせっかくそれたと思ったらまた戻ったよ!いいよその話は!

「あのー、その話はまた…」

後日でいいっすか?ととりあえず無理矢理にでも話を打ち切ろうとおずおずと手を挙げようとした瞬間、「なまえさん」とまた声を書かけられる。
そちらを見れば、朝食を食べ終わったのであろう、トレーを持った土井先生がいた。

「はい」
「朝食が食べ終わってからでいいから、私の所にきてくっれないかな?」

しめた!これはここから抜け出すには絶好のチャンスだ!
私は「あ、もう食べ終わったんで!」とトレーを手にとっても立ち上がった。そして「じゃあ、小平太君、長次君、仙蔵君、あと文次郎君!またね!」と言って土井先生の後について行った。

「なまえのやつ、慌ただしいなぁ」
「……もそ…」
「ああ、そうだな」
「……」


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は組だけはみご。
まあ不幸委員長と巻き込まれ不運だし…(言い訳)