「江戸!江戸!ひゃっほーう!私、江戸なんて初めて来ましたよー」
「それはそうでしょうね」

なまえさんは目をキラキラと輝かせながら、「目にうつるものが全て面白い」と言うようにキョロキョロ回りを見渡す。
何だか遊園地とか、そういう所に来た子のようだ。(昨日この時代に来たなんて思えないな…)

「あ、先生、着物って高いですよね」
「いや、そんなこともないですよ」
「ふーん、そうなんですか」

へぇー、と言いながら回りを見渡してして、はぐれないようにか俺の着物の裾を掴んで着いてくる様子は、凄く可愛い。

「先生ぇ!」

後ろから、聞きなれた声がして振り向く。
そこには、龍馬さんがいた。

「龍馬さん」
「先生の姿が見えたもんでの。お、その子は昨日の子かえ?」
「ええ、そうです」
「嬢ちゃん、もう大丈夫がか?」

龍馬さんがなまえさんの頭に手をおく。すると、なまえさんはくすぐったそうに笑って「はい」と言った。

「そりゃ、良かった!そいやぁ、わしの名前言うとらんかった、わしは土佐の坂本龍馬じゃきに、よろしくの」
「坂本龍馬覚えた!」
「おぅ!嬢ちゃんはなんちゅーんじゃ?」
「んー、みょうじなまえ、なまえで良いですよ」
「なまえか、良い名前じゃ!」

ガハハハと笑ってワシワシとなまえさんの頭を撫で回す。
なまえさんは嬉しそうにと笑っていた。
ひとしきりなまえさんを撫でた龍馬さんは、「そいじゃあー、二人で何しとるんじゃ?」とニヤニヤしながら聞いてきた。

「あぁ、なまえさんの着物を買いに行くんです」
「ほぉーん…、わしも、行っていいかの?」
「え?あぁ、私は構いませんが…」

なまえさんはどうですか?と聞こうと思ったら、「龍馬さん面白いから一緒に行きたい!」となまえさんが叫んだ。
嬉しそうに目を開いてキラキラした眼差しで龍馬さんを見ている。
「なら一緒に行きましょうか」と言うと、なまえさんが「やったー!」と手を上げだ。

「ほいならーなまえに一着買ってやろうかのー!」
「いやっふー!」
「え、良いんですか?」
「最初になまえに会ったとき、何か奢っちゃる言うたしの」
「そうなんですか」
「おはぎ奢ってもらうつもりだったのに…」
「おはぎも買うちゃるがー」
「ギャー!龍馬さん優しい!素敵!」
「そうじゃろ!そうじゃろ!」
「仲良いですね…」


一緒になまえさんとはしゃぐ龍馬さんを見て、少しイラッとしたのは気づかなかったことにしよう。

(龍馬さんは俺の友と呼べる人だから)