「降り出しに戻る!」


調子こいて橘さん家から出てきたものの、何にも解んないから、降り出し地点、私がいつの間にか寝ていた所に戻ってきた。
ちなみに、二時間ほど迷ったぞ!

「なんか良いもの落ちてないかな…」

携帯とかさぁ…、まぁ繋がるとは思わないけども。

がさがさとその辺に落ちていた棒で草むらをつつくが何も落ちている様子はない。
はぁ、っとため息をついてその場に座り込んだ。

「あー、何もなしかー!」

元の世界に戻る手がかりとか、この世界に来ちゃった原因とか、食べ物とかさ!

「てか、お腹空いた…」

ぐぎゅる、となるお腹を押さえて、崖の方に這って行く。そして、崖の下を覗き込んだ。
下には大きな川が流れている。

「魚…居るかな…」

塩焼とか美味しそうだぞ!と考えていると、後ろのほうから「うぉぉぉおお!!!」と言う声が聞こえた。何かと確認しようとすると同時に、知らない男にバターンと押し倒された。

「うぐはっ!」

あ、なんかスッゴい可愛くない悲鳴が出た!腹の底から出た!
てか背中痛いな!

「誰なんだ!痛いぞ!いやその前に何!?」と私に突っ込んで来た男に聞こうとすると、その男はいきなり「馬鹿もーん!」と怒鳴った。


「あ、すみません」
「命を粗末にしちゃいかんき!人間生きてればいつか死ぬが!そんな事しちゃいかん!」
「え、ちょ、なんか、勘違い…ぐえ!」

やめてー!はなしてー!!と男の人の下でもがく。
すると、パッと肩をつかまれて「じゃあ、あんな所覗き込んで何しちょったんじゃ?」と真剣な目で問われた。


「お、お腹が空いたから、魚居ないかなーって見てました」
「……、腹が空いた?なんじゃ!そうじゃったんか!そりゃー、悪いことしたのう!」

男はガハハハハと笑いながら謝る。
私は「いや、良いんだけど、腹が減ってるから何か奢れコノヤロー!」と言おうとしたけど、腰に刀が刺さってるじゃないか!
こんなこと言ったら殺されるな!自重しろ私。

「そうじゃ!」
男の人が何か閃いたような声を出した。

「間違って押し倒した詫びに、なんか奢っちゃろう!」
「まじ、ですか!?」
「おう!何でも奢っちゃるき!」
「え、じゃあ、おはぎと…うっ!」
「ん、どうした?」
「あ、頭…痛…、う…ぅ」

さっき倒れた時と同じような酷い頭痛に頭を抱える。
男の人がおろおろして居るのが分かった。

「た、大変じゃ!立てるかの?」
「む、むり」
「仕方ないのぉ、嫌じゃろうが我慢してくれ」

男の人がそう言い、「何が?」と聞こうとフッと体が浮いた。
どうやら背中に担がれているようだ。まぁ、いわゆる『おんぶ』ですよね。

「医者んとこ連れてっちゃるけえ、頑張れよ」
「い、しゃ…?」
「おお!なーんでも治す凄い医者じゃ!」
「それ、は…たの、もしい……っ」
「嬢ちゃん?嬢ちゃん!?」
「………」

おじさん、いや、お兄さんと言っておこう。
すまないね。私は本日二度目の気絶をいたします。
もー勘弁してくれ。