「って言う夢を見た」

向き合っている友達にそう言った。すると、少し間が空いて、ハンッという笑い声が聞こえた。あれ?なんか酷くない?見下してない?


「なに、アンタ歴史がそんなに好きなわけ」

と聞かれる。「そうでもないけど」と言うと「じゃあ漫画の読みすぎだ」とケラケラケラっと笑らわれた。
そして、「これを機に歴史の勉強でもすれば」と言われた。酷い!

「好きじゃ無いけど解るし!」
「じゃ関ヶ原の戦いは何年?」
「……ほにゃらら年?」
「要するに知らないのね」
「……」
「まぁ良いんでないの?」

ニヤニヤしながら私をはげます友達に、「うるさい!」と言い返す。すると、ハハハと笑ってから友達は「あ」と何か思い出したように声をだした。

「なに?」
「そう言えば、アンタ…」
「ん?」
「肥った?」
「ふとっ、ふと………、
じゃかしいわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!


ッハ!?夢…か…あぁでも肥ったのは現実だよ、ああ…
いや、ちょっと気をぬいちゃったんだ、テスト終わったから、ご褒美にって…それが、それが…!!」

こんな事に!!と嘆いていると「お目覚めになられましたか?」と女の人の声が聞こえた。
どうやら、あの時、私は倒れてしまったようだ。
そういえば、私はいつの間にかふっかふかの布団の中に居た。

「失礼いたします」

すっと扉が開いて、綺麗な女の人が入ってきた。

「気分はいかがでしょうか?」
「え、あ、すこぶる元気です」
「それは良かったです。今先生を呼んできますね」

にこっと笑って女の人は部屋を出ていく。
先生って、道端に倒れてた得体のしれない私のためにわざわざ呼んでくれたのだろうか。
なんと言うか、申し訳ない。もの凄く。
「そのまま転がしといてくれて良かったのに…」と思っていると「先生をお呼びしました」と女の人が男の人を連れてやってきた。

「こんにちは」
「あ、こんにちは」
「医者の南方仁です」
「南方、仁…」
「もう体調は大丈夫ですか?」
「はい、もーね、すこぶる元気です」
「それは良かった」

にこりと笑う男の人、南方先生はとても可愛らしかった。
(なんだか凄くタイプ…いやいや、そんなアホな事言ってる場合じゃないんだけど。)
そして、南方先生が傍に立っていた女の人に「咲さん」と声をかけた。この人は咲さんなのか。可愛い名前だ。
なんて他の事を考えていると、咲さんは「では…」と言って部屋を出ていった。
広い和室には私と先生の二人きりだ。
私が咲さんの名前の方向にそれていた時、一体なにがあったんだ。誰か説明プリーズ。

「えと…」
「貴方とお話したい事があります。先ほどの女の人、咲さんと言うのですが、咲さんには席を外していただきました。少し、良いでしょうか?」
「え、まぁ」

怪しいヤツめ! であえであえー!!ぶすっ!て事は無いでしょうかね。そうなら良いんですけどね。

「御名前を教えてもらえますか?」
「あ、みょうじなまえです」
「ではなまえさん、貴方は、この時代の人ではないですよね?」
「…へ?」

いきなりな質問に間抜けな声を出してしまった。
「この時代の人ではないですよね?」と聞かれても、何がなんだかサッパリだ。

「え、ちょっと待ってください、この時代って、今はなに時代なんですか?」
「今は文久2年、明治元年の6年ほど前です。そしてここは江戸です」
「え?あ、ちょ、ウソん!?」

なーに変なところに来ちゃってんの私ってば!
文久2年?江戸?そりゃ皆着物着て時代劇みたいなカッコしてるわ!

「いや、でもそんな…私が居たのは平成で…って言うか貴方は何者!?」
「私も平成からこの時代に来ました。
倒れている貴方を咲さんに言われて見つけた時、まさかと思いました。」
「え?何でですか?」
「なまえさんの着ている服を見てです。そんな服この時代には無いですからね」

そう言われ、そういや制服だっけと思い出す。
江戸の街に制服姿なんてすんごくミスマッチだよね。

「私は働いていた病院の屋上から落ちて、いつの間にかここに居ました。なまえさんも、学校の屋上から…とか?」
「いや、私は、轢かれたんです。車に」
「え?」
「学校に行く途中、車にバーンと轢かれて、とりあえず、死んだの、かな?わかんないんですけど、それで意識が飛んで、いつの間にか森みたいなところに居て、で、探検してたら酷い頭痛がして、気を失って、今にいたるんです」

とまぁ、こんな感じ。
なんて言うかカオス!

「すっごいですよね、轢かれて来た場所が病院じゃなくて江戸なんて」
「…え、まあ」
「さて、 元気になりましたし、私はおいとましようかと」
「え?行くところ有るんですか?」
「…あー、有りませんけど、まぁ、大丈夫ですよ。うん。大丈夫です。世の中って狭いんで、歩いてたら元の時代!って事が有るやもしれません!」
「しかし…」
「あ!」

先生は何か言いたそうだったけど、無視した。
私はいつだってゴーイングマイウェイだったりする。

「看てもらったのに、私、お金持ってないです!」
「いや、お金はいらないですが…」
「あ、10円めっけ!!先生!これ、一応とっといてください。元の時代に戻ったら某美味棒でも買ってください」
「え、あぁ…」


ポカンとしている先生を尻目に私は部屋のすみに置いてあったローファーを掴み、縁側で履いて、立ち上がる。

「じゃあ、私は旅立ちます!またどこかで会えると良いですね!それではアデユー!!」


サヨナラーと先生に手を降ってから「ボーイズビーアンビシャス!!」と叫ぶと、ガッと石に躓いてこけた。
後ろから「あ…」と言う声が聞こえて、それから「大丈夫ですか?」と言われたので、ちょっと振り向いて「えへへ」と笑ってから「それでは!」と言って、私は走しり出した。
もちろんさっき躓いた石は避けたぜ!


(嵐のような子だ…)
(まじで行くとこないなぁ…)