「ん…」

眩しくて、目を開けた。
目に入るのは、青い雲ひとつない空と、緑が茂る木。
思わず「あー」と間抜けな声が出た。

「綺麗……」

何て言うか、癒される。うん、癒されるねえー。日々の疲れが吹っ飛ぶなー。
と一人言を言ってみた。寂しいじゃないか、私。何だか友達居ないみたいで。

はぁ、とため息をついて寝返りをうつ。
そして、ハッとして飛び起きた。

「なんで、私生きてんの…?」

おかしいおかしいおかしい!
私、学校に行く途中に車にはねられたはずだ。まったく、思い出すのも忌々しい。赤色の、何だか高そうな車だった。乗っているヤツは、性格の悪そうなヤツだったし…って話がずれている。

とりあえず、私は不幸にも赤色の車にドーンとはねられ、ヒューっと一回転、どさっ、みたいなそんな感じだったはずだ。
あれは完全に骨とか折れてたし、頭から血も出てたはずた。

ペタペタ、と自分の身体中を触ってみる。
痛くない、折れてない、血も出てない。

「なんと………まぁ!?」

身体中を確認して、怪我が無いと分かる。そして「凄いじゃないか私!」と自画自賛。
ははは、最強だ私!!イヤッホー!と叫びながら、ピョンピョン跳ねていると、またハッとした。

「ここ、どこ?」

崖のような場所に一面に広がる野原。その下は大きな川。バックには森?林?とりあえず木が茂っている。


「車に、はねられてここまでとぶっ飛んだ?」

とあり得ない事を言ってみる。そして、いやそれはねぇよ。と自分で突っ込んだ。

「いや、とりあえず誰かに連絡を取ろう…」

ポケットに携帯が入っていたハズだ。と思い出し、ポケットに手を突っ込んで携帯を出そうとする、が無い。

「あれ?携帯が…無い…」

何処かに落としたか?と思い、周りを探すが、何も落ちてはいない。
そういえば、車にはねられる前まではカバンも持っていたのにそれさえも無かった。

「なんで?いや、ってか全体的におかしすぎる…」

身体が丈夫だとか、奇跡だとかそんなレベルではない。
何故私は怪我ひとつない?持っていた物は、どこにいった?それから、ここは何処だ?

頭を掴んでその場にしゃがみこむ。
色々考える。だけど何も分からない。
深呼吸を何回かして立ち上がった。

「立ち止まってても、仕方ないかな…」

自分にそういい聞かせ、森だか林だか分からないけど、その中にある小道に向かって歩き出した。