あぁ、死ぬのって、こんな感じなんだ。
頭の中がふわふわとして、何だか指の先から消えそうな、
苦しくはなく、痛くもなくて、ただ、身体中がジンジンとするだけだ。

『死』とは何時も近くに有るものだ。人間なんていつ死んでも可笑しくないのだよ。
父は日頃からそんな事を言っていた。母は、そんなことを言う父を苦笑いで見つめていた。

本当に、『死』と言うものは突然だ。私はいまソレの隣にいるようなものだ。

それなりによい家庭で、平凡。親は優しく、至って平凡。普段の生活だって平凡。である。
そんな平凡平凡平凡エンドレスな平凡な私に、私の生活に、終止符が打たれようとしている。
それなのに、不思議な事に死に対する恐怖はなくて、生に対する執着もない。
死ぬなら死ねば、助かるのなら助かればいい。なんて、そんな感じだ。


フワフワしながら消えていきそうな意識の中で、私は「死んだらなにをしよう」と考えた。そして「あ、死んだらなんにもできないのか」と気づいて、意識を手放した。

ばいばい さようなら

なんて心の中で言ってみる。