昼過ぎ
剣術のレッスン(っていうのはなんだか変なきもするけど)を終えて、縁側で動かしまくった体をだらりと休ませる。
ふと自分の手を見ると、痛々しく血が出ていた。


「いっー…」

好奇心で触ってみると結構な痛さ。
一人で触って悶えていると、龍馬さんが「大丈夫かえ?」と私の手を覗いてきた。


「あー、豆が潰れちょる」
「豆ってこんなに痛いんですね…初めてできたな」
「南方せんせに見てもらうがかえ?」
「いいですいいです!何言われるかわかったもんじゃないですからね!」
「そうかえ?しかし…そこかしこアザだらけじゃ」


そういって龍馬さんが私の腕にできている青いアザにぐっと触れる。
ずきっと走る鈍い痛みに思わず私は顔をしかめる。

「わざと触んないでくださいよ!」
「すまんすまん。けんど、もうちくっと優しく教えたほうがいいがか?」

龍馬さんが申し訳なさそうな顔をして私の腕をさする。
さっきみたいに痛くはないけど、すこしくすぐったい。

「やだなぁ、十分優しいじゃないですか。こっちはもっと激しくしてもらってもいいのに、これ以上優しくされたらたまったもんじゃないですよ!」
「じゃが、これ以上は南方先生にばれるぜよ」
「大丈夫です、うまく隠しますから」
「なにをうまく隠すんですか?」


後ろからよく聞きなれたお医者様の声がした。
恐る恐る振り返ると、そこには恐ろしいほどニコニコしている南方先生がいた。


「ひぃ!」
「なにを、うまく隠すんですか?」
「いや、別に大したことでは…」

ばっと龍馬さんの手から自分の腕をひっこめる。
が素早く南方先生に掴まれてしまった。

ニコリ、と笑って本日三度目。

「何を、うまく隠すんですか?」
「う、あ、アザを…隠そうと……」


そのあとはあれよあれよと吐かされ、体中のアザを見つけられ、怒られた。

「なにかこそこそしているなとは思ってたんです!」
「はい…」
「こんなにアザだらけにして!」
「はい…」
「なまえさんは女お子なんですよ!わかってます!?」
「はい…」

「本当になまえさんは少し目を離すと…!気が休まりませんよ!」なんてブツブツと言いながら慣れた手つきで私のアザを見ていく。
目で龍馬さんに助けを求めてみたが、「わしには無理だ」というように首を横に振られた。