朝の光で目が覚めた。
起き上がって、部屋を見渡せば、そこは自分野部屋ではなく、たくさんの紙や本の山が部屋だった。
そこで、「そうだ、昨日は先生の部屋にお邪魔して寝てしまったんだった」と気づいた。それから、机に突っ伏して寝ている先生にも一つ遅れて気づいた。


* * *


「ほんと、すみません」
「いや、いいんですよ」

気にしないでぐださい。と笑う先生。
いやしかし、先生の布団を強奪したあげく爆睡なんて申し訳なくてしょうがないでしょ、普通。

それなのに…それなのに「揚げ出し豆腐おいしいですよ」なんてニコニコ笑う先生…。なんて、なんて…!

「なんて可愛いんだ…!」
「なまえさん?」
「あ、いえ。じゃあお詫びにこの揚げ出し豆腐先生にあげます。まぁ、作ったのは咲さんですけど…」

どうぞ、と揚げ出し豆腐を先生に渡すと、これまた可愛い笑顔で…あ、なんか鼻から赤い汁が…!

「うはー!!」

けしからんー!と悶えながら畳をバシバシ叩いていると、栄さんに「これ!落ち着きなさい!」と怒られた。ごめんなさい!


* * *


「よぉ!元気かえ!」


縁側で微睡んでいると、大きな声で叫びながら龍馬さんがやって来た。

「あ、龍馬さん、元気!」
「ほうかほうか」
「先生なら恭太郎さんと一緒に向こうにいるよー」
「ん、まぁそれもそうじゃが」

ほれ、と龍馬さんが私の手に包みを置く。
「なにこれ?」と聞くと、龍馬さんはにこりと笑って「団子じゃ」と答えた。


「なまえと一緒に食べようと思ったがじゃ」
「なんと!」
「茶でも入れとーせ」
「よっしゃ任せろ!」


バタバタと立ち上がり、台所で鼻歌を歌いながらお茶を入れる。
お盆に乗せて、慎重になりながらまた龍馬さんの所に戻ると、先生と恭太郎さんがいた。
龍馬さんは何時ものようにわらっているけど、恭太郎さんは少しイライラしているようだ。真ん中で先生がおろおろしている。可愛い。


「お手合わせ、お願いしたい」恭太郎さんが言う。「ええがよ」にこり、と龍馬さんが笑って縁側から立ち上がった。
先生がお盆を持って立っていた私に気づいて「なまえさん…」と困ったように笑う。
しかし、残念ながらそんな可愛い顔されても、私には何も出来ないです。



* * *


パンパンと竹刀同士がぶつかる音が道場に響く。
隣では先生が口を少しあけて二人の動きを目でひたすら追っている。
私も同じで、少し違うのは、もうワクワクして身体が今にも動きそうな所だ。

真剣で戦っているんじゃないか、と錯覚してしまうほどの迫力。本当に見惚れてしまう。

パァン!と一際大きな音が道場に響く。
龍馬さんが面を取ったのだ。
一瞬シーンとなり、恭太郎さんの「参りました」と言う声がした。
防具の下から少し複雑そうな顔をした恭太郎さんが出てくる。
次にガハハハと言う龍馬さんの豪快な笑い声と満面の笑み。
「いやーわしも負けそうじゃった!」
とにこにこ笑って恭太郎さんの肩を叩く。
するとふっと息をついて恭太郎さんもニコリと笑った。
ついでに私の隣にいる先生も吊られてにこにこと笑っている。

そんな青春漫画の一ページのような光景の中、私の脳内ではある欲望というか企みと言うか計画が着々と進んでいた。




(きまれば話は早いよね!)