「じゃでぇー蝶じゃって」
「うー、でも花のほうもかわいい…」

「先生どっちがいい!?」と一斉になまえさんと龍馬さんがこっちを向く。
二人とも両手に着物を持っていて、どっちの柄がいい?と見せてくる。

「え、どっちも似合いますよ」

龍馬さんが持っている蝶の柄もなまえさんが持っている花の柄も、どちらも淡いシンプルな作りで、なまえさんにあうと思った。
しかし、二人は「それじゃ答えにならない!」とブーブー言っている。


「あー、私は花柄のほうが」
「んにゃ!先生ぇ、蝶のほうが可愛かよ!」
「なんかますます選べないですね…」

うー、となまえさんが唸る。
俺は思わず「どっちも買えば良いじゃないですか」と言った。
別に一着だけしか買わないとは言ってなかった。

「おー、その手もあったの」
「え、二着も要らないですよ。咲さんのお古あるし」
「一着も二着も変わらないですよ」
「でもー」
「ほいじゃー、わしがこっち買うて、先生がーこっちじゃの!」
「あ、はい」
「どっちの方が気に入られるか、勝負じゃのぅ」

耳元で龍馬さんに言われた言葉に思わず「へ?」と声が出た。

「勝負って…」
「惚けおってー、顔にでちょー」
「顔に…?」

何が?と聞こうと思ったら、龍馬さんはグフフと怪しい笑い方をして、なまえさんの所に行ってしまった。

(何が、出てるんだ…?)