ギシリとベッドがきしむ音とおでこに当たる暖かい感触で目が覚める。
いつかの昼みたいに私の目の前に金髪、でもグラサンじゃなくて、赤い目。

「ウェスカーさん…?」
「起こして悪いな」
「なんで、今日は帰ってこないって…」
「そんなこと一言も言っていないぞ」
「でもエクセラさんが、今日は忙しいからって…」
「なまえの顔を見なければ私は死んでしまうからな」

そういってニヤリと笑うウェスカーさんに、私はベッドから飛び起きて抱きついた。

「っ、なまえ?」
「……」
「珍しいな。これがツンデレのデレってやつか?」
「…、ウェスカーさんが、ウェスカーさんが…全然かまって、く、くれないから…その…さ、さみしくて…」
「…!」
「だいたいっ、勝手に私のこと拉致ったの、ウェスカーさんなのに、私のこと放っておくのはどうかと思いますっ…!」


そこまで言って私はとてつもないことを言ってしまったと我に返る。
さっき私が言ったことは、面倒くさい女がよく言うそれに似ているし、ウェスカーさんがいなくてさみしいなんて、まるで子供のようだ。

すごく恥ずかしくて、ウェスカーさんの顔が見れない。


ベッドに飛び込んで布団を頭からかぶる。が、ばさっとウェスカーさんにはがれてしまった。


「なまえ」
「っー…」
「こっちをみろ、なまえ」

それでも恥ずかしくて
手で顔を隠すが、それもあっさりと取られ、無理やり目線を合わせられる。


「っー…、恥ずかしい、です…っ」
「ふん、かわいいやつだ」
「かわいく、ないですっ…」

ニヤニヤといつものように笑うウェスカーさん。私のおでこに、頬にちゅっちゅとキスを落としていく。


「ウェスカーさ…っんっ」


やめてくださいという前にそれをウェスカーさんの唇で塞がれる。そして私の唇を割って温かい舌が入ってきた。私の舌は逃げようとするが、それはかなわず、ウェスカーさんの舌に絡め取られてしまう。
何度も何度も角度を変えて口づけているうちに、恥ずかしさは臨界点を超えて、頭がふわふわして、わけがわからなくなってきた。


「っは…ウェスカーさん…ウェスカーさんっ…」
「なまえ」
「……好きですっ」


* * *

ふっと目が覚めて体を起こす。
時計を見ればもう昼の2時を回っていた。
隣には誰もいない。
ウェスカーさんはまたどこかに行ってしまったのだろう。



「……はぁ」



ずっと寝ていても仕方ないので、ベッドから降りる。
にしても昨日はなんて恥ずかしいことを言ってしまったのだろうか。
「ウェスカーさんがいないと寂しい」なんて言ったうえに「好き」だなんて。
思い出すと頭痛がする。


「けど、まぁ…そうだから…しかたないんだよね…」


と一人ごちてリビングへのドアを開ける。


「おお、起きたか」
「はい……」
「聞け、日本から荷物が届いたぞ!これは今人気のまどか☆まぎかのまどかの衣装でな!」
「そうですか…、って、あれ?ウェスカーさん?」
「どうした?」
「なんでいるんですか!?どっか行ったんじゃ…」
「どこかの誰かが私がいないとさみしいというからな!やめた!」
「はっ…?」
「これからはずっとそばにいてやる」


「な…」と開いた口がふさがらない。
やめた?仕事を?
なんの仕事をしていたのか私はよくわからないが、忙しそうだったのはわかる。
それを、やめた?私がさみしいといっただけで、ホイホイと…?


「な、なに言ってるんですか!?やめたって、そんな…」
「なまえが寂しいといったからな!それに、どうせクリスに邪魔されるだろう」
「いや、意味わかんないんですけど!!は?」
「そんなことより、これを着てくれ!まどかだぞ!」


ピンクのふりふりしたスカートをもってニヤニヤするウェスカーさんはいつものウェスカーさんで、また昨日自分の言ったことを思い出して死にたくなった。


私のあれは気のせいだよねきっと…
(っ〜…!どっか行ってくださいもう!!)
(なんだと!?まどかの何が気に入らないんだ!?)