「あ、イヴァンさんがいない!」


イヴァンさんって身長いくらぐらいですか?って聞いても返事がないから、あれっ?と思って後ろを見たら、イヴァンさんが居なかった。


「あれだけ離れないでって言ったのに…」


そう愚痴りながら回りを見渡すと、おもちゃ売り場のワラワラと子供が集まっている所に、あのでかい姿があった。
見つけやすい人だ。


「イヴァンさん!なにしてんですか!」
「あはは、でかいうさぎがいたから何だろうと思って」


風船配ってたよとニコニコと笑うイヴァンさん。
いつもそれくらい優しそうだったらポーランドとか日本に嫌われなかったんじゃないか。
とか思ってしまう。

それよりも…

「イヴァンさんなんでそんなに子供に人気なんですか!?」
「なにが?」
「なにがって、風船配りのうさぎを差し置いてイヴァンさんに子供の人だかりが…!」
「ははは、みんなまとめてロシアに持って帰ろうか」
「危ない!危ないよ!みんな逃げてー!
じゃなくて!行きますよ!」


イヴァンさんのマフラーを引っ張って子供たちの中から抜け出そうとすると、いきなり下から声が聞こえてきた。


「おねーちゃんらこいびとなん?」
「は?」

なんじゃ、と思い下を見ると、はなたれ小僧という言葉がピッタリな子供がいた。

「らぶらぶなん?」
「いや、らぶらぶじゃないけど」
「こいびと?」
「いや恋人でh
「ただの僕の飯使いだよ」
コラ、イヴァンてめーなに言ってんだばかぁ!」
「飯使いが僕にそんな口聞いて良いと思ってるの?」
「ギャーすみませんすみません!」

あやまるからコルコルしながら首を絞めないでください!!!!






「もう疲れた…なにが疲れたってイヴァンさんと子供の相手に疲れた…」


あのあと、「飯使いってなーに?」なんて無垢な顔で質問してくる子供たちの中からイヴァンさんのマフラーを引っ張って逃げだしたものの、ワラワラとそのあとをついてきて、結局服を買うときもズッとついていた。

そりゃ、あんなに子供を引き連れてたら怪しまれるし、そもそも私の隣にいる人が怪しいし、(一応外国人だし、でかいし、暑くなってきたってのにコートにマフラーだし)
何人の人に変な目で見られたか。

夕飯の買い出しにまでついてこようとした時は流石に全力で止めた。
これ以上ズラズラ並んでたら通報されかねないよ、ほんとに。
「でも、凄くたのしかったよ」
「なんでですか?うるさかったし、引っ張ってきたし…」
「だって、あんなにたくさんの人が僕と話してくれるなんて、何十年ぶりだろう…
ソ連のころ思い出しちゃったな…」

そう言って幸せそうに笑うイヴァンさんは凄く嬉しそうで。あと、ちょっと寂しそうで、

「……。イヴァンさん、今日何が食べたいですか?」
「あー、ボルシチが食べたいなー」
「無理です」



(ロシアさんの笑顔、綺麗ですね)
(何かいった?)(いえ…)